半蔵門御散歩雑談/ODR Pickups

株式会社ODR Room Network

このブログは、株式会社ODR Room Networkのお客様へのWeekly reportに掲載されている内容をアーカイブしたものです。但し、一部の記事を除きます。ODRについての状況、国際会議の参加報告、ビジネスよもやま話、台湾たまにロードレーサーの話題など、半蔵門やたまプラーザ付近を歩きながら雑談するように。

【半蔵門ビジネストーク】20171012 信用マークのジレンマ

【半蔵門ビジネストーク】20171012 信用マークのジレンマ

 

先日、道を知らない運転手のタクシーに2台続けて遭遇した話を書いたが、

www.odr-room.net

タクシーに限らず、サービスや製品の質を示すなんらかの認定マークや保証マークは昔からよく見かける。古くは、JISマーク。小学生の時、「これがついているのは安心だ」という説明を受けて、子供心になるほどと思ったものだ。

 

ただしマークをお金で売っては意味がない

 

タクシーは、優良マークがついているが、このマークは会社に対して発行されており、所有台数の多い会社が取得しているため、実に90%が優良マークを表示しているという。

 

全部のタクシーに同じマークがつくと意味がない。いいタクシーはどれなのか?基準が正しいのか?甘すぎないか?

 

business.nikkeibp.co.jp

現実には、優良マークタクシーなのに、荒い運転のドライバーにあたってしまうことがある。すると、マークに意味があるのか?ということに当然なってくる。

タクシー会社としては、自社マークはなるべく多く付けたい。付いていない車が多くては信頼が得られないし、ビジネスチャンスを逃すかもしれないからだ。厳密に審査すればいいじゃないかということではあるが、費用をかけて審査をしてマークをつけない=すなわち短期的にはビジネスへのマイナスを増やすということで、どうしてもマーク付与のための審査に走りがちとなるだろう。

マークをお金で売っているようなものである。しかし、それでは逆効果でもある。ビジネスの成功はより多くのマークを発行することだが、みんなに発行してしまっては意味がない。

ジレンマだ。

 

 

マーク付与数がビジネス規模

同じような話がある。

現在、ECサイトのトラストマークに関わっており、日本のTradeSafe株式会社が審査して発行するトラストマークの国際連携を担当して各国での会議に参加している。消費者が店舗や担当者に直接触れにくいECショップを一定の基準で審査し、「このショップは会社も品質もサポートもトラブル対応も安心ですよ」とある種のお墨付きを与え、そのマーク付与の費用をいただいているビジネスなわけだが、トラストマーク、信用マークをビジネスにすると特有のジレンマに対峙することになる。

TradeSafe社の場合、審査は無料である。審査を通過したECショップにマークを発行することで初めて収益となる。だから、審査してマークを付与しないとなれば、利益にはならない。しかし、審査を甘くしてマークを乱発すれば、前述のタクシーと同じことが起こる。

しかし、審査が厳密でマークを限定しているので、結果的に収益の規模が限定されてしまうのだ。ここに信用マークビジネスのジレンマがあるのだ。他のビジネスなら、対象となる顧客のシェアを増やせば増やすほど売り上げが増えるのだが、信用マークの場合、それをすることは、信用の質を薄めてしまうことになるので、市場規模の一割合で頭打ちにせざるを得ないことになるのだ。

 

レーティングによるマークの質の維持

そこで、付与したマークのレーティングをすることになる。

これで成功しているのは、米国のBBB(Better Business Bureau)だ。彼らは、北米の20000以上の企業にマークを付与しており、BBBマークがないことが企業信用上の不利益になるまでになっている。すると前述の「みんながマークを持っていることによる信用が薄まる効果」が出て来そうだが、BBBは信用度合いに応じてAからFのレーティングを与えることによって、マークの信用を高めている。BBBはトラストマークの一つの基本モデルである。

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シェア経済とトラストマーク

最近は、AirBnBやUber、シェアサイクルなどのビジネスサービスが増えて来ている。タクシーなどは業界で自主規制もあったろうから、マークがたくさんあっても実際の品質がそれほどばらつくこともなかっただろうが、シェアビジネスのマーケットプレイスではその品質をどうするのかが問題となってくる。いやもうすでに問題になりつつあり、英国ではUberを禁止してしまった。

利用者=消費者がその品質を見極めるサービス=トラストマークの重要性はますます増してくるだろう。事業者も消費者も信用マークのジレンマに注意しながら、よい市場サービスを成り立たせていけるか。まだまだ課題は多い。