【読書/映画感想】20180316 ブラックオアホワイト
浅田次郎氏の久々の文庫は、霧の中でぼんやりと考えているのか歩いているのか夢なのかリアルなのかもわからなくなってくる読後感で頭痛がしているようなしていないような気がしてくる作品だ。
あらすじ(超)概略
一族の資産を引き継いで優雅な暮らしをしている「都築くん」の大手商社時代の壮絶で駆け引きに満ちた話と謎の白い夢と黒い夢の 話を聞いていると何が現実なのかすらよくわからなくなってくる。
ホテルで枕を頼むと、
「ブラック オア ホワイト?」
と聞かれ、選んだ色によって夢の内容が大きく違ってくる。「都築くん」の部屋で私がその話を聞いている。インドだったりパラオだったり、中国だったり、京都だったり、その場面は変われど登場人物は設定を変えた知っているような知らないようなはっきりしない人々である。
話を聞き終わり「都築くん」の秘密を理解してタクシーに乗り込んだ私は黒い枕と白い枕を勧められるのだった。。。
黒い夢の誘惑
夢は夢、覚めれば消えてなくなるのだが、その後味は残ってしまい、1日を不快な気分で過ごすこともある。ホワイト夢の安心感がいつも続けばいいと思う反面、ブラック夢の危ない怖い不快な夢にも浸りたいと思う。もうだめになってしまえ、なにもかも壊せ、黒く塗れとローリングストーズの唄のようにも思う。
二面性、パラレル
白い夢と黒い夢は、裏腹の世界のようでもあり、パラレルワールドのようでもある。考えてみれば周りに起こる物事や出会う人、出会う順番など、どうにでも組み合わせが出来うることばかりだ。しかし、会う順番はスケジュールできるし、会う人は自分で選べる部分もある。
なんだって少なくとも二面性がある。あなたからみた私の周囲の世界と私から見た私の周囲の世界。私からからみたあなたの周囲の世界とあなたから見たあなたの周囲の世界。結論ありきでこちらが正しいといわれるとそうかなとも思ってしまうし、結論ありきで考えるとあなたの言う世界はなんだそれ?とも思えてしまう。
二面を認めれば平和になるか?
そんな原理で考えるなら意見の一致をみるのは難しいし、考えが異なって言い争いに、果ては武力抗争にまでなってしまう。世界平和なんてありえないと思いつつも、両方の世界観があることを理解して、そこを配慮しながらいけるなら、なんとかなるのかもしれないとも思えるし、しかし、そうなると前に進んでいくこと、進歩していくことはなんと時間がかかりそうだとも思う。どこかで打ち切っていかないと、前には進めないだろう。
問題は、人は他人の夢に興味は持ち続けられないことだ。
この小説の夢も最初は興味深く読めたが後半になってくるとどうでもよくなってきてしまった。物事の二面を認めれば判り合えるかもしれないがそもそも話を聞けなければこの仮説はなりたたない。世界平和はこないのではないかと過去を振り返っても思えてしまうのだ。
(はてな1090記事)