ランチタイムの主権放棄
集まった仕事仲間A、B、C、Dがランチをどうするか相談しています。
C「そろそろランチにしませんか?」
B「そうだね」D「いいね」C「Aさんはどうですか?」A「私はどっちでも」
B「私はあまりお腹が空いていないので、軽いものがある場所がいいかな」
C、D「じゃあ、歩きながら探しましょう」
B「ここに蕎麦屋があるね」D「蕎麦いいね」C「僕はガッツリ食べたいな」
B「カツ丼もあるみたい」D「お得定食は、天ざるとカツ丼のセットだって」
C「ちょっとまってこっちにファミレスが」D「ファミレスは蕎麦もあるみたい」
C「お!いろいろなどんぶりフェアだって!」
B「Aさんはどうですか?」
A「私はなんでもいいですが。。。」
C「じゃあ、ファミレスにしましょうか?ファミレスはいろいろありますからね。」
B「賛成」D「いいね」
A「。。。」
ランチタイムのファミレスは混雑しています。少し並んでなんとか席を確保し、それぞれが思い思いに食べたいものを注文したようですが、Aさんだけが元気がありません。C「どうしました?」
A「ここには、私の食べたいものがないんです。」
A「まさか私が食べたいものがないなんて思いませんでした。」
A「皆さんがファミレスならいろいろあると言っていましたから、それを信じてしまって。。」
これには、一緒にいた皆も困ってしまいました。並んで席を確保し、既に食事を注文してしまっていますし、今からキャンセルして別の店を探していたのでは、午後の仕事に間に合わないかもしれません。結局、Aさんは、コーヒーだけを注文し、
あとからコンビニのおにぎりを買って、オフィスの会議室で会議をしながらもそもそと食べていました。なんとなく他のメンバーも気になってしまい、効率も落ちてしまいました。
* * *
8月25日は横浜市の市長選挙でした。当家は、長女は、出かける直前になって「忘れてた!時間ない!」と騒ぎましたが、「10分早く出られれば間に合うぞ。車で送るから投票しなさい」と促され、アルバイトに出かける前に朝一で投票、私と相方は、外出する次女を駅まで送って、その足で投票所へ。
ランチタイムの場所選びで、意思表示をしなかった(あるいはできなかった)Aさんは、自分が食べたいものが食べられず、しかも、一緒にいた皆にも心配をかけ、もしかすると(みなさん口には出さないが)不快な思いをさせ、時間が遅れて、午後の仕事にも支障が出てしまいました。其の理由は、言わずもがな。たかがランチの決定ですが、意思表示も意見表明もせず、しかも、ファミレスに自分の食べたいものがないことを知らないナイーブさ(Naiveは、純粋なという意味合いで使われますが、語源の英語ではどちらかというと悪い意味。考えが甘い、騙され易いなどで使われます)にあります。
横浜市市長選挙の投票率は、当日の18時現在で、19%前後。前回投票率49%と比較してなんと30%ダウン。
政治学者 故・丸山真男氏の「日本の思想」に「権利の上に眠る者」という節があります。日経新聞「風見鶏」2013年8月25日版http://www.nikkei.com/article/DGKDZO58910200V20C13A8PE8000/
選挙で投票しない人=棄権者は、文字通り権利放棄者です。憲法によって国民は主権者になりましたが、そこに安住して権利の行使を怠っていると、ある日主権者ではなくなっているかもしれません。憲法12条は、「自由と権利は不断の努力で保持しなければないない」としています。
ランチで失敗したAさんは遅いお昼と少しの不快感とちょっとの残業で済みましたが、横浜市市長選挙の棄権はもしかするとそれどころではないかもしれません。