【ODRピックアップ】20150410 領空の上の雲(クラウド)
国の領域を示すのは陸地である「領土」です。これは物理的な土地ですから境界線を明確にすれば比較的明快です。中には、ベルギーとオランダのように、歴史的な領土の変遷の結果、一軒の家の中に国境がある例など(不過視な不可思議な国境|“法務がHomeにやってきた”~Homu is coming Home.~|ライフスタイル|ヨミモノ|QuonNet
http://www.quon.asia/yomimono/lifestyle/law/2012/10/22/3654.php)もありますが、これが領土を取り巻く海や空となると少し複雑になります。「領海」は、国際法では、海岸線から12海里と”合意”されており、相対する国からの距離12海里以内だとその中間線とされています。そして「領空」もこれと同様とされています。領海も領空も明確な線が引かれているわけではありませんので、よく聞く領海侵犯や領空侵犯は、争いの素になります。
ところで、最近はネットの世界もこの”領空侵犯”が問題になっているらい。。。?
クラウドはインターネットの環境を雲に例えて、データをどこかに決めて格納するのではなく、まるで空を漂う雲の中にあるように、しかしそれ故に、最適なコストになるということをコンセプトに考え出され普及してきました。”国境を超えて”データが置かれる事で、”最適なコスト”を実現する理想的なニュアンスもあったと思います。
しかし最近では、欧州でのプライバシーデータの管理に関する新ルールついて、特に域外への持出しに対して自主規制だけでは不十分という指摘(http://wirelesswire.jp/Watching_World/201403131611.html)があり、クラウドだからOKではなくなりつつあります。また安全保障上の問題でインターネットへのアクセスが遮断されれば、国外へのアクセスが遮断され、域外にあるデータの保護や変更ができなくなる懸念もあり、特に、安全保障に関わる情報や企業秘密、自治体、金融機関、医療機関が扱うプライバシーデータや個人情報について、国外に置かれているというのは、禁止はされていないがリスクが高いと感じるし、”クラウド”でも”領空”内に置きたいという要望はある意味自然の流れでしょう。
NTTコミュニケーションズは、欧州域内の重要情報を扱うため 、イーシェルター(ドイツ)を買収しました。同社はオーストリア、スイスにも拠点を持ちますが、プライバシーへの扱いが厳しい欧州では、消費者や企業の情報を国外のサーバーに持つ事が問題のなる場合が多いためです。
クラウドの産まれた本場、米国のアップル社もアイルランドとデンマークにデータセンターを設けることを発表しました。これも同様の理由が背景にあります。
一方、IBMは東京とオーストラリアにもデータセンターを開設。日本マイクロソフトはオフィス365の提供を国内拠点から開始するとし、そのタイミングを同じくして、SONY生命や豊島区が導入を決定しています。
(日経新聞 2015年3月4日朝刊のコラム「ビジネスTODAY」より)
プライバシー保護への関心が高まり、データの管理されたサーバーの物理的所在を領土内に置きたいという流れは自然なことであると同時にクラウドのコストへのある種の限界点となるのかもしれません。