【ODRピックアップ】 20151203 フィリピンのeCommerce電子商取引 2015
フィリピンとは、2009年くらいからeCommerce電子商取引に関する関わりをしてきました。特に、トラストマークに関してフィリピンで立ち上がったばかりの民間のトラストマークQARTAS Corporationは、当初からATA(WTAの前身)に意欲的に関わり2009年に加盟、2010年にはさっそく総会のホスト国として活躍しています。
* * *
1.ネット通販はまだまだの理由
同国では、未だインターネットによる電子商取引は発展段階。言い換えるとまだ普及するまでには至っていません。その大きな理由はいくつかありますが、
1)まずインターネット回線の速度が十分でなく、十分な速度を得ようとすると非常に価格が高くなるということ。オフィスでも家庭でも月額で数万円以上ということは、日本の約10倍ですが、平均年収が日本が408万円に対して、48万円と8分の1ですから、企業や富裕層にしか利用できない状態。
2)また、島で構成されていますが、ネット販売が有効であろうそうした首都以外の島へは海底ケーブルが敷設されていない状態です。
3)ネット決済では、代引きが普及していますが、クレジットカード決済は、カード普及率も低く、利用率も低い。これは、クレジットカードの不正利用、具体的にはスキミングされたカードの利用が多く、クレジット利用があった場合は、店舗としてもその責任をかぶる可能性があるため、本人確認などの手間をかけています。
4)人口の多くを占める富裕層以外(中間層と貧困層)は、自宅にエアコンを設置していない場合も多く、ショッピングモールに出かけて涼みながらショッピングを楽しむという面もあり、ネット販売を利用することへの意味を見出しにくいという面があるようです。
未着、破損、商品違いなどのトラブルはあるものの、普及期にあるので、ネット販売の評判が失われるほうが市場立ち上げの妨げになるので、トラブルになってしまうよりも、ショップが負担して返品、返金してしまったほうが人件費がまだ安いので安く上がるということも特徴的です。(ODRなどにはなかなか至らない)
2.買っているのは以外にも
ところでフィリピンのGDPの約7割は消費で、その消費を支えるのが、1000万人とも言われる海外への出稼ぎ労働から送金されるお金です。
この統計と分析によれば、銀行口座を経由した総金額は218億ドルで、持ち帰ったりする額がその倍あるといわれているため、合計すると国家予算に匹敵するお金が海外で稼がれていることになります。大部分はアメリカ、カナダで働く専門職によるものだそうですが、電子商取引で一定の比率を占めるのが、この海外労働者がフィリピンのサイトでネットで購入して家族などに送る需要です。
APECのホスト国となったフィリピンは、成功を目指し、フィリピン流おもてなしにつとめたようですが、その一環として、ただでさえ渋滞の多い道路の1レーンをAPEC用に専用化しました。その結果渋滞がひどくなったそうですが、しかし、一般の国民の方々は、あまり苦情をいうのではなく適応したようです。背景には、政府への不信というよりあきらめ?いや、おおらかな国民性のようにも思えます。それは人口が1億を超え、年率7.5%の伸びを維持する経済成長率を背景に、非常に楽観的な見通し、かつての高度経済成長期の日本のような「希望」なのかもしれません。