【ODRピックアップ】20160309 台湾新政権の日台協力
3月2日に、ホテルグランドアーク半蔵門 華の間で開催された公益財団法人交流協会
(台湾との窓口 公益財団法人交流協会 東京本部)主催の台湾情勢セミナー「台湾の産業発展と日台協力」に出席しました。出席者は60名強。日本人が中心ですが台湾人の方もちらほらと雑談の北京語から伺い知ることができます。
講演は、中華民国全国工業総会副秘書長の蔡宏明氏による日中逐次通訳で2時間弱。
- 日台の貿易は7兆円。第4の貿易相手国
- 500万人が相互に交流している。363万人が台湾から日本へ来ている。
- オープンスカイ協定により羽田以外の空港の直行便が自由化
- 二重課税が起こらないように相互に話し合いで努力を続けている。
特に、二重課税については、
日本と台湾には公式には国交がありません。国交がない状態(大使館がなく、条約が結ばれていない、租税条約も締結されていない)ので、二重に課税されますが、所得税のうち一定の限度で、台湾で課税された部分が控除される場合があるそうです。
弊社でも台湾に支店を開設していますが、二重課税とならないよう注意しています。もちろ脱税にもならないようにですが。
セミナーでは、以下のようなポイントが説明されました。(講演資料より)
- 金融危機後の台湾産業が直面している試練
台湾の産業は、輸入中心から輸出型に転換した50年代、石油化学、鉄鋼が始まった70年代、IT関連が始まった80年代、PCなどハイテク機器の90年代と発展してきましたが、2009年金融危機で落ち込みました。現在は、工業35%:サービス業65%で、輸出主導型での製造業は重要な地位にありますが、コスト増により海外移転もすすんでいる。
国際市場では、安い労働力との競争、製品多品種少量化、量産市場は途上国、カスタマイズ市場は工業国に挟み撃ち、環境問題プレッシャー。
国内では一人当たりGDP低下、労働力不足、B2Cへの転換が課題。
- 台湾産業の海外進出状況
過去10年、輸出中心の台湾産業は世界景気の波をもろに受ける。2009年の金融危機、2012年のユーロ危機により輸出額に大きく影響。しかし内需の規模にも限界。
中国への輸出は増えたが減少傾向。米国へは増額。中国は自主サプライチェーンを延ばしているため。特に、タブレットPCが著しく減少。
日本、ASEANへは増加しつつある。
1952年からの累計投資額は、中国1549億米ドル、ASEAN864億米ドル、その他(日本など)1006億米ドル。
- 新政権の産業発展・進出戦略
蔡英文新総統の戦略
「経済原動力再生3本の矢」(ん?どこかで聞いた?)
1)生産力4.0 2)バランスのとれた発展、 3)単一市場脱却
「3つの重点」
1)未来産業、 2)永続的なグリーン産業、 3)生活産業
「5つのイノベーション計画開発研究」
1)グリーンエネルギー 2)アジアシリコンバレー 3)スマート産業革新機器
4)国防産業 5)バイオ医薬
「国際経済貿易戦略」
1)国際協力 2)TPP加盟、2国間EPA、多国間FTA 3)新南向政策ASEANとインド
「両岸政策」(維持)
1)意思疎通、挑発せず、予想外のことをせず
2)ECFA,WTOの基本原則
3)台湾支出への監督管理、リスク管理、機密技術保護
4)ハイテク投資の規範化、台湾の技術的リード維持
5)大陸からの観光客 質重視傾向へ
- 日台協力
相互バックアップによる海外チェーン遮断予防
第三国市場共同運営
運営コスト削減
産業協力による韓国対抗
アジア太平洋ハブとなる
TPP加盟、日台EPAを目指し相互協力メカニズムを維持発展
日台パートナーシップ強化 日台インダストリー4.0
- 生産力4.0計画
ドイツのインダストリー4.0計画などを参考。七大産業を10年以内に一人当たりGDPを60%以上引き上げ、アジア・太平洋の生産力の模範となるように推進していく。
スマートサービス、スマート製造により顧客価値を創造
科学技術応用によりIoT、スマートマシン、ロボット、ビッグデータ活用し、カスタマイズニーズを満たす
産業転換
七大重点産業への転換。製造業(電子情報、金属加工・運輸ツール、機会設備、食品、繊維)サービス(小売物流)、農業。
冒頭、台南地震への日本からの迅速な支援に対してのお礼が述べられ、日台は良好な関係を継続していますが、蔡氏が「一部微妙な問題を除いて」と付け加えました。日本から見ると、台湾は親日国で”微妙な問題”もないように思えますが、実際には、尖閣諸島の領有権、最近では慰安婦問題なども聴こえてきているようです。
経済協力においては、ざっくりいうと、日本もっと協力してくれというトーンに聴こえます。また、中国へのコネあるから一緒に行こうという誘いは継続中。でも、どーも中華圏同志で日本からカネとろうと密談しているように思えてなりません。というか、ビジネスだから当然なのですけどね。
友好、親日とはいえど。。。ビジネスは、やはり競争です。