【ODRピックアップ/半蔵門ビジネストーク】20161111 主体的なブラックと受動的ブラック
電通の新入社員が過酷な労働で追いつめられ自殺を図った事件は、同じ新入社員の娘を持つ親としてはショッキングでした。こういう経緯は本人や当事者にしかわからない面が多いかと考えます。ご冥福を祈るしかできません。
さて。
当社のお客様は外資系が多く、ITの会社でないところばかり。専任のIT担当者を置く余裕はなく(置かない方針)なので、当社の担当者が、その会社のIT担当者の役割を果たしています。
その守備範囲は、
- PC購入の選定から始まり、
- 各種セットアップ、
- 日常のシステムの利用相談、そして、
- システム化の相談、
- 開発業者の選定、
- 開発の状況を把握し、
- その他OA機器業者の対応、
- 業務フローの見直し
なども入ってきます。
その意味では、業務運営上重要なIT関連機器の問題は、優先順位の高い対応となり、
「どうにかして」
「必ず」
問題を解決しなければならなくなります。そして、20数年前に担当していた大手企業のIT部門の主担当者のことを思い出します。
かつて私は、開発業者の立場でした。
すなわち、顧客先のIT担当者がいて、その人を窓口として、必要な作業をする立場。どのようにしたいかは、先方のIT担当者が考え、調整し、予算化し、事業者に発注して、成果物を検査し、社内に導入させ、運用の管理をするということを行ってくれています。一部、それらの業務も委託されることもあります。
だから、問題が起きると、自分の委託された部分が原因でないかを第一に気にします。調査した結果、担当でないとわかれば、IT担当者に戻します。IT担当者は、さらに原因を究明すべく、頭をひねります。帰れないかもしれません。でも、業務が止まったら困るので、そんなことはモノともせず奮闘するのです。
IT担当者にとっては、ブラックな環境かもしれません。
当時のIT担当者とは、私的にもよく食事や飲み会などをしました。
「大変ですよね」
「いや。これ俺の仕事だからね。」
どうにかしろ!というのは、「命令ではなくて、彼らからの依頼なのだから、プロとしてやるのは当たり前だ」と言っていました。
業者であった私は、自分の責任範囲でないとわかれば、あるいは、推測できれば、そこでお役御免となっていましたので、遅くまで残る必要もなく、ブラック環境ではなかったような気がしています。ただ、解決に向けて協力要請をされると、それは「本来こちらは悪くないのに」と思い、やるべきかどうかをいつも迷っていました。
今にして思えばブラックです。土曜日に呼び出されて、月曜日までになんとかしてくれといわれ、結局、日曜日も帰れず、2連続徹夜。月曜の朝に出社してきた客先の人々に同情と迷惑がられたまなざしを注がれました。
担当者は、とても主体的ななかで、ハードワークをこなし、私は、受動的に徹夜をしていました。
ブラックな環境は、主体的か、受動的かで、大きく変わってくるのだと思います。