【読書/映画感想】20170308 彼女は一人で歩くのか?
人間に近いアンドロイド(映画「ブレードランナー」)やロボット、あるいはアバター的なものが、人間のように行動するSF(映画「サロゲート」)はこれまでもあった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブレードランナー
https://ja.wikipedia.org/wiki/サロゲート_(映画)
これらで描かれていたのは、外見は人間だが明らかに製造された”もの”、もちろん、人権(アンドロイド権?)のような議論も挿入されてはいるが、あくまで、人間とは異なる過程を経て生まれて(産まれてではない)きたものであった。
1 細胞レベルが人工的になったら
小説「彼女は一人で歩くのか?」では、細胞レベルでの移植や入れ替えが行われた結果、培養された人間=ウォーカロンだけでなく、”産まれてきた”人間ですら、入れ替えられた細胞で自己増殖し、細胞レベルで入れ替えられ続けた結果、寿命は意味をなさなく成った。しかし、実は産まれるために必要な要素=数種類のパラサイトによるメカニズムは細胞に組み込まれず結果として、産まれなくなってしまった世界。
主人公のハギリ博士は、インタビューによる人間とウォーカロイドの判別手法を発見し、数値化する研究を完成させた結果、命を狙われることになる。
判別されると困るのは誰か?初めは、ウォーカロンかと思っていたが、もしかすると、それによって特権を維持しようとする人間かもしれない?疑心の中で様々な事件が起きる。。。
インタビューによる人間とウォーカロンの判別のアイデアは、ブレードランナーでの方式を思わせるが、これは結局、人間側による差別でもある。
2 脳も細胞だから入れ替え可能か
小説では、細胞レベルでの人工的な入れ替えと増殖が可能になっているので、年齢を重ねれば、ほとんどの細胞が人口培養され増殖したものと入れ替わってしまう。脳細胞も例外ではなく、そうなると、長い年月の間に、ほとんどが培養細胞起源のものと入れ替わってしまう。人間を人間たらしめる(と考えられている)考える機能を果たす脳細胞も入れ替わったら、それは人間なのか?
3 生まれる?産まれる?
細胞は培養で生まれてくる。増殖し、入れ替わる。でも、産まれてくることはできなっくなった。そうなると生殖機能こそが人間の証になるのだろうか?
4 人口減少と出生率低下の果て
人口が減りさらに産まれなくなり、一方で自分は長生きを極めると、人種や国家や宗教などで争うこともなくなってくるのだろうか。しかし本書では誰が人間か?誰がそれを決めるのかという争いの兆しが見えているのか?
DNAレベルであなたのルーツを見てみると、
みんな自分が、いまいる国の100%のルーツから来ていると感じている、信じている。イングランドの彼は、ドイツは嫌いだといい、別の男性は、自分はアイルランド人であなたよりすぐれていると主張する。。
しかし、DNAが明らかにする事実は、DNAレベルでは、様々な国のDNAを受け継いで今の自分が成り立っていることを示していることに感動し、争うことがバカバカしくなってくると感想を述べている。。そうだ。
自分が産まれるために、両親がいて、祖父母がそれぞれにいて、その親がいて、そのまた親がいて、10世代遡れば、1024人がいたことの結果として、今の自分がいて、1024人のDNAを受け継いでいる。
30歳くらいで産んでいると仮定すれば、10世代で300年。2016年だから、67世代。遡ると。。。
10世代 1024人
20世代 1,048,576人(百万)
30世代 1,073,741,824人(10億)
40世代 1,099,511,627,776人(1兆)
50世代 1,125,899,906,842,620人(千兆)
67世代 147,573,952,589,676,000,000人
それだけの人間が自分の前にいないと産まれなかったのだ。
これが全部別人ということは考え難いので、すごい確率で誰かしらと親戚にならざるを得ない。
ほんとに?
笑うしかないくらい、すごい。