【半蔵門ビジネストーク】20170426 サムライアプローチとカウボーイアプローチ
もう30年以上前、前職のIT会社で海外製品や技術の調査を担当していたころ、米国大使館が主催した米国ソフトウェア製品の売り込み説明会に参加したことがありました。まだインターネットもなく、LANはNetwareの普及初期。説明会には、大手商社やメーカーに混じって、隣席はまだソフトバンクを立ち上げたばかりで売り出し中の孫さんでした。
説明者の
「We will release another version for OS2 soon.」
を、通訳者のおじいさんが、
「え〜、もうじきオーエス2番のために新しいバージョンを出します。」
と通訳してかえって混乱したりして。
そこで、品質に関する質問が出てきた時に、説明者が話題にしたことが、
「サムライアプローチとカウボーイアプローチ」。
デバッグの手法
簡単にいうならば、
日本は、
「リリースする前にじっくりと品質検査し、完璧に近いと見なされた状態で発売する。」
そして、バグが数件でる。
米国は、
「テスト版をリリースし、バグがじゃんじゃん出る。そして、最後に完成版をリリースする。そして、バグが数件でる。」
この前年に、私自身が職種としてのプログラマー路線をやめようと決意する原因となった二人のスーパープログラマーの後輩2人が入社してきました。そのうちの一人、H君は、指示を受けるとすぐに手を動かしだします。そして、あっというまにプロトタイプ(のようなもの)を作り出します。しかし、勿論これはキチンと動きません。あれこれいじりながら、最後には所定の期間で開発を完了します。
F君は、腕組みをして考え始めます。なかなか、コンピュータに触りません。もうあと残り20%の日程しかないころに、オモムロにプログラミングを開始して、所定の期間で開発を完了します。
先の説明を聞いて、H君はカウボーイで、F君がサムライだと思ったものでした。
うつさないためにか、うつされないために
ところで、毎年のインフルエンザ対策報道を見ていて、またこのアプローチの違いに思い至りました。
米国では、マスクをすることは、
「私は重傷。近づかないで。うつるよ。」
ということだそうです。
日本では、「うつるかもしれないからマスクで予防」しています。
言い方を変えると、
「ヤバければ外出するな、外出するということは、大丈夫ということ、故にマスクも不要。弱毒性らしいし。」というのが米国。
いつだっかた、インフルエンザの感染者報道を受けて、マスク着用者が増えた気がする日本は、
「重傷でなければ感染していても気がつかずに外出するだろう、あるいは仕事を休めないかもしれない、マスクをしていなくても、発病していない保菌者もいるかも。ウィルスが変異する可能性もあるし。だから、うつされないようにマスク」
となります。この違いは、様々な歴史的な背景もあるでしょう。しかし、正に事前対策型サムライアプローチの日本と、結果対策型カウボーイアプローチの米国の違いが如実に現れていると思います。
事前対策か事後対策か
紛争解決にも、この違いが現れています。事前対策と事後対策。なるべく、紛争や問題ができるだけ起きないようにしておくということ。紛争にならないようにする日本、主張して紛争になったら、争えばいいじゃないかという米国。
また、これは、「いつコストをかけるのか?」という問題でもあります。しかし、そこにコストをかけすぎると際限がありません。一方、あとから問題が多発するのは信頼性の問題にもなり、精神衛生上もよくないのです。
最上を目指す選択か、最悪を避ける選択か。
カウボーイとサムライは、今日も荒野を進んでいきます。