【読書/映画感想】20170801 創業社長死す 高杉良 著
長く続く企業は、どうしたって創業者とその一族だけでは続かない。子孫に継承し続けられる場合もあるだろうが、子供が跡目を継ぎたくない場合もあるだろうし、その能力がない場合もありうる。そうして生え抜きの、あるいは、外部からヘッドハントされた経営者へとバトンタッチしていく。
そうして、それがうまくいくとも限らない。
創業者は、おそらくなによりも才能も運も度胸にも時代にも恵まれ、仲間にも恵まれていたのだろう。だからこそ成功してきた。しかし、それを見て育った息子や娘が後継者が素直に精神を継承しても失敗したり、親や創業者を超えようと失敗したりもする。
リーダーの資質とは何かを考える小説だ。
例えば人間力が素晴らしく、みんなが後をついてくる、しかし、判断を失敗し、そのフォローにみんなが廻ってくれる、人間力が素晴らしいからだ。そして周囲の苦労によってよい経営結果を残せるのが優れたリーダーか。
あるいは独断専行、気まぐれ経営、しかし、読みが素晴らしく、社員は振り回されながらも、極端な失敗に翻弄されることもなく、日々を過ごして、的確に成功を勝ち取るのが優れたリーダーか。
ドラマ的には前者がいいが、みんなの苦労はいいのだろうか?家庭が崩壊したりする社員はでないのだろうか?後者は、結果的には後継者に困りそうだ。
我が身を振り返る。今までに巡り会ったリーダーはどうだったか。
社会人として最初に出会ったリーダーは、面倒見がよく、優しく、対外的に戦う人ではなかったが、いつも一緒に苦労してくれる人だった。だからつらくても頑張れた。しかし、決して次のステップへの準備にさける時間はとれず、それを相談すると、「わかっているんだけどさ」と、日々をこなして行くしかなかった。
次は、技術的なリーダーシップをとれるエンジニア的リーダー。新しいことにチャレンジし続け、それを部下にも推奨し、次々と新しい仕事をとってくる。新分野の仕事はいつもわくわくした。しかし、ついて行けない者もいる。彼は自分の技術的興味が忙しく、後進は自力で育ってくるものを待つという方針だった。そして取締役になると、敵対勢力になってしまった。
そして初めて出会った強面のリーダー。大手外資系出身。速いアタマの回転は、ときとして何を目指しているのか分からず疲労困憊。しかし、苦手タイプを乗り越える試練を与えてくれて、乗り越えさせてくれた。この頃に気が付く。できない理由よりできる方法を考えよと。しかし最後は訴訟を残して会社を去った。
リーダーはみんなをその時の危機から守るより、一緒に乗り越えることにより、未来へのノウハウや対応力を付けてくれる人でなくてはいけないと思う。 少しくらいは憎まれても。
群れを守って全滅するより、次に備えて策を授けることが重要だ。未来に導くことこそが、すなわち未来を開くことが、「リーダー」の意味だから。