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(日本ADR協会主催シンポジウム)
ADRによる紛争解決―到達点と可能性
~ADR法施行10年を迎えて~
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以下、ODRに関する歴史、種類を簡単にご紹介し、現在のODRに関する海外での動向の特徴、などをご紹介しておきますと。。。
ODRは、1990年代前半から、インターネットの普及とともに、オンラインで発生した紛争(当初は、性別詐称やオンライン詐欺など)の解決手段として注目され、様々な試行が開始されました。
2001年に米国で出版された最初にODRを扱った「Online Dispute Resolution」(著者:Ethan Katsh)では、ODR(テクノロジー)を4th party(第4者)と位置づけ、距離や時差を埋めて、司法へのアクセス利便性を高める手段として、また、重要人物の移動リスクを削減するものとして、活用提言をしています。
技術的には、距離、移動時間を克服するために、当事者が同期的にアクセスするチャットやTV会議、時差がある場合にも有効な非同期型で、専用の電子会議室を活用するタイプがあります。
実験、そして実用、投資対象
この数年の間に、システム化による実用化が進んでいる国があり、欧州では電子商取引分野での利用については法制化されてきている国もあります。本格的な投資資金も動き始めています。
米国ではAAAを始め多くのADR機関などが電子的な申し立てを採用しているほか、電子商取引の普及に伴い、裁判には向かない少額紛争の解決手段として、eBayなどで実用化され、今では、離婚紛争や保険金の交渉の自動化などにも適用例があります。オランダ、米国では、DVを伴う離婚調停や、時差の大きい東海岸と西海岸の調停などへの適用の試みが進められたりしています。
MeidaiteMe.comでは、当事者と調停者が申し立てから主張の交換、TV会議による対面的な対話、調停者への支払いまで一つのプラットフォームで完結する仕組みを提供しています。また、Sidetakerというサイトでは、当事者の主張が公開され、公開陪審のように不特定の第三者が意見を述べて投票する仕組みを提供しています。
欧州では、電子商取引に関して、ADR指令に基づいてODR規則に従ったODR機能が提供されています。
南米ではeInstituteやODR LatinAmericaという組織でスペイン語圏の複数国間の紛争を扱えるように活動し、執行力を担保するためのトラストマークeConfianzaとの組織間連携も行われています。
各国で個別にODRシステム(的なものも含めて)が利用され始めていますが、越境(クロスボーダー)紛争では、さらに相互連携のためのシステムが必要になってくるだろうと考えています。ただし中央集権的なシステムは管理面で実現が難しい。どの国が管理保存するのか、そのための法制度はどうするか、特に、個人情報の越境など解決すべき問題も多いからです。
ODRはLPR(Legal Process Re-engineering)
司法へのアクセス向上という切り口では、裁判のオンライン化とテクノロジー導入という議論が2016年のハーグで開催されたODR FORUMでもテーマとなりました。
- 現行プロセスへの部分的なテクノロジーの導入なのか、または
- 裁判プロセスは全てデジタル化によって置き換えられるのか、あるいは
- 裁判とは別のODRプロセスとして実現していくのか、これはADRのオンライン化ということになると思います。
大きな方向性としては
「司法プロセスのIT化」なのか、つまり現行のプロセスをITによって効率化したりアクセスしやすくしていく方法と、
「ITを駆使した司法プロセスのLPRなのか」すなわちITを駆使して司法プロセスそのものを変えていく(これは法律をも変える可能性がありますが)ことにも繋がっていきます。
日本では
日本でも、2001年にNPO法人としてシロガネサイバーポールが設立されボランティアの弁護士さんによるネットトラブルの相談が一定の成果を残しています。
また2011年に消費者庁越境消費者センターが開設され(現在は国民生活センターに移管)、越境トラブルのみを扱っていますが、受付から回答、海外提携機関との連携も含めて全て専用システムと電子メールのオンラインでのコミュニケーションを取っており、年間5000件近い電子商取引の越境トラブルを処理しています。
ADR機関なども含めて(少なくとも)苦情相談の申し込みの入り口はオンライン化していけるのではないかと考えますが、(便利になることによって)相談が増えすぎると対応しきれないという懸念もあるようで、なかなか進んでいないようにも思います。(この点は、万能の入り口を造るのではなく、専門特化したそれにすることによって、紛争の内容を明確化することができるのは、これまでに行われてきたODRでの各種の実験が示しています。例えばeBayでは、長年の研究と実践により紛争類型を限定した結果、年間数千万件の紛争が処理されているそうです。)
まとめ
すでに技術は進み、それに利用者は適応してきています。ODRは、結局技術と制度とその利用者との関わり方の問題です。テクノロジーが先行し、制度は追いついていかないといけない状態なのだと考えています。生まれた時から電子機器が普及し、携帯があり、SNSがあり、メッセージングツールで会話している世代は、対面では人見知りでも、ネットでは雄弁になるように見えます。ODRはもしかするとバズワードにすぎないかもしれませんが、技術を活用して司法へのアクセスをしやすくすることが重要です。
ADRにしても裁判にしても、紛争の解決が当事者同士で決着しないならきてくださいというのが基本スタンスと理解していますが、当事者は、「自分が正しくて相手が間違っている」というところが出発点です。紛争解決者は、この入り口を抑えることで、紛争顧客を確保していくことが大事ではないでしょうか。ODRとはそうした紛争解決プロセスでのリノベーションにもなりうると期待しています。紛争の入り口(苦情処理)を抑えることがADRでもODRでも仲裁でも調停でも顧客確保のキモとなってくるとも考えられます。
毎年各国で開催されるODR FORUMには200人くらいの参会者が世界中から集まってきますが、大学が会場になることが多く、学生がODRに触れてその分野を研究したり志たりしていることもあるようです。そして彼らがODRの支援者、当事者、エヴァンジェリストになっていく。実用的な視点だけでなく研究的な視点でもその人口を増やしていく必要があるのではないかと考えます。
【ODRピックアップ/半蔵門ビジネストーク】20170321 NPO法人 じゃこネット主催 「世界消費者権利の日 記念の集い」
…問題提起を受けて、 ODRとは何か? ODRの利用シーン、メリットは? 海外の状況はどうなっているか 日本でODRが発展するためには何が必要か などが紹介され、参加者からの発言、質問や議論もありました。 この模様は、後日まとめられて、前述のCIでLibe Blogとして紹介される予定です。 ODRは、1990年代前半から、インターネットの普及とともに、オンラインで発生した紛争(当初は、性別詐称やオンライン詐欺など)の解決手段として注目され、さらに電子商取引の普及に伴い、裁判に…
… ODR Room ODRとは、 ~紛争解決(Dispute Resolution)にテクノロジ(Online)を利用する~ ① Dispute Resolution on Online(DR on Online) すなわち 紛争の解決にオンラインを活用する。商取引におけるB2B。政府と市民(G2C)、市民と市民(C2C)、政府と政府(G2G)など ② Dispute occurred on Online, resolving Online(ODR on Online) ネッ…