【半蔵門ビジネス雑談】20180223 それは”高橋さんの仕事”だから「総務部」ね
最初に入った会社は社員数は多かったけれど、当時としては、上場前のベンチャーだった。今にして思えば、結構どころか相当に自由。それこそ無法地帯と変らなかったように思う。決め事も、当事者、関係者同士の交渉や議論で決まり、責任も組織でなく個人がとっていた。業務分掌や職務分掌は一応あったが、人が異動すると関連する仕事も異動していく有様。
「これはどこの仕事?」
「それは”高橋さん”の仕事だね。今彼は総務だから。。。総務の仕事だな。」
ありえない 笑
仕事の種類が組織でなく、人について廻るなんて。
でも、そんなゆるーい会社だったのだ。
それでも、時を経て、社員数も2000人まで成長し、上場(当時は店頭登録がまだあった)が視野に入ってくると、株主の目にさらされることに備えなければならない。合理的に経営しているか、合法的に経営しているか、などを示すには、一定の管理の手法によって運営されていることが判りやすく、実際的なのだ。
この上場会社への進化の真っただ中にいたことで、無法から管理への流れ、苦しみ、コツ、勘所のようなものを体験できたのは、非常にいいことだった。もし、これらが既に完成していた大企業だったなら、まったく経験できなかったことだろう。
以上は、上場に伴う管理体制の標準化の文脈だが、「XXさんしかできない仕事」が、会社の発展を阻害するということもある。
例えば、在庫管理。倉庫が複雑で情報が整理されていないために過去から積み上げられたノウハウ?を握ってしまった古い社員がいないと回らなくなってしまった例だ。
あるいは調整が必要な機械の微妙な調整加減が特定の誰かにしかわからない例。その人がやすんでしまうとどうにもならない。製造ラインが止まってしまうこともある。
または重たい物品の輸送には、力持ちの彼がいないとできない中小企業なども多そうだ。
それぞれが、在庫管理という汎用的な知識ノウハウの専門家というのでもなく、機器調整といっても、その機械しかわからない、また単なる力持ちというだけの「その人だけしかできない」仕事。それは、組織の機動力を限定し、停滞させてしまう。
企業では、「自分しかできない仕事をつくれ」という場合もある。それはそれで、モチベーションにもなるだろう。しかし、その後自分も企業も組織も発展するためには、それらの技術やノウハウを、その場所限定から汎用的な知識へとまとめあげて、誰かに伝達できるようにするべきなのだ。そして自分はまた次のステージへ向かえばいい。
数を数えて計算するノウハウが、そろばんを生み、電卓を生み、コンピュータに進化したように、切るためのノウハウが、カッターやハサミになったように、記録する方法がペンを生み、印刷技術となったように、知識を習得し極め、それを新たな知識としてまとめ、後進に伝達していくこと。
持続可能な社会の根幹だ。