ODRに高望みしてみる【半蔵門ビジネス雑談】20190124
司法のIT化検討会によれば、IT化は3つのeにより実現していくという。
「e提出」、「e事件管理」、「e法廷」だ。
「e提出」で、Webを経由して申し立てを行い、
「e事件管理」で、保管管理してプロセスをコントロールし、データを共有し、
「e法廷」では、法廷に出廷しなくても証言や審理ができて、判決を言い渡す。
これらはすでにある技術で十分実現できる。AI的な機能やブロックチェーンを使うとなればまた別のハードルがあるが、第一段階としては問題はないと思われる。APECのワークショップでもそのようなコメントが出ていた。ODRは技術的には難しいことではないのだ。
むしろ、目標にしたいのは、以下の課題をODRで改善できないかということだ。例えば、以下のようなことで。ADRのデメリットを見てみる。
(上記リンクより)
- 相手方が話し合いに応じなければ手続を開始できない
- 途中で一方が手続から離脱すると、その時点で手続が終了
- 合意内容を強制的に実現させることができない
高望みしてこれらをODRの技術的サポートで改善できないか?
- 応諾率向上
ADRでは、申し立てがあっても、相手が応じないとADR手続きは成り立たない。ODRにすることによってこの応諾率をあげることができないか。話し合いの場所に出向かなくてもいいのは、時間や交通費を節約できる一つのメリットであり、応諾してもいいかと思わせられるかもしれない?または契約時に応じることを約束事項としておけないか?応諾について、様々な行政サービスがWebでの手続きにより便利になっているが、それと同じような感覚で手続き応諾率があがるかもしれない。スマホでもできるようにすればさらに向上しないだろうか?
- コーカス待ち時間での阻害感
コーカスとは、「別席調停」とも言われる。
ADRで各当事者と解決策を検討するために個別に問題点を話し合うこと。しかしこれは相手が調停者と何を話しているのか非公開なので待たされているほうは疎外感を抱きやすい。場合によっては調停から離脱するきっかけになってしまうかもしれない。
ODRのプロセスでは、少々大胆な案だが、音声なしのTV会議でコーカスの模様を相手方に見せることで声は聞こえず内容は不明だが参加しているようにして疎外感を排除することが可能かもしれない。(アイデアレベル。十分な検討が必要)
- 途中離脱の防止
ADRでは、一致点が見出せない場合、調停案に合意できない場合、途中で離脱することも自由なので先のコーカス映像公開に加えて、オンラインでいつでも途中経過を参照できるようになることで、関わりを維持できる。また、前述のコーカスがリアルタイムだけでなくテキストベースで調停人といつでもできるようになれば、参加意欲を途切れさせないようにできるのではないか。
- 執行力
ADRには合意を実行するのは当事者に委ねられる。多くは双方が合意した内容なの実行はされるようだが、評価型の場合、一方には合意しにくい場合もあるだろう。この場合、実行されにくいかもしれない。
まずは、ODR導入のタイミングで契約を見直し、ODR利用を条件として、かつ合意の執行を条件に入れることだ。また同時に、評価の公開を入れておきたい。
ADRは、その特徴でありメリットの一つでもある非公開性があるが、内容は非公開であるものの、相手からの評価は現在はない。代表的なODRと評価されているeBayでは、取引相手の評価が公開され、それが指標となってソフトな執行力となっているので、こうした評価を取り入れることで、執行力確保につながる可能性がある。