ODRを整理する【半蔵門ビジネス雑談】20190724
日本でもODRが進みはじめた。既に当ブログでも何度も紹介している。
民間ベースの取り組みと並行して、未来投資戦略にも取り上げられ、関係省庁からのヒアリング、意見交換なども公式・非公式に行われ始めている。
これまでの大学の授業や講演では、主に、歴史や先行事例、あるいは日本での取り組み、そして法制化に関する動き、更にはおもしろ事例などを中心に発表してきたが、やっとODRが進み始めた日本で、この進みを加速するために何が必要か、
- ODRが今はどんなステージなのか
- ODR導入の意義
- テクニカル面
- ファイナンス面
について整理しておく。
- ODRが今はどんなステージなのか
先行諸国では、研究、実験期から実用化の時期にある。
そうした各国での導入実用化はどのような形式をとっているかというと、
(1)プラットフォーム専用型
eBayなど、マーケットプレイス専用のODRとして導入されているもの。
(2)特定分野特化型
離婚調停など、特定の紛争類型に特化したもの。
(3)部分的支援ツール
SmartSettleなど、金額交渉の部分だけに絞ったもの。
(4)汎用的
AAAなどが提供するあらゆる紛争類型を受け付けることを想定したもの。
(5)調停人データベース
Mediateme.Comなど、調停人のデータベースとして提供され、紛争解決を受け付けてくれるもの。
(6)その他
2.ODR導入の意義
元々は、コスト削減、時間短縮などを図り、司法へのアクセスを高めることが意義として捉えられている。
(1)コスト、時間の削減、リスクの低減
申し立てなど手続きの時間、期日のための移動時間、そこにかかる関連費用などを低減し、また、重要人物の移動リスクなどを軽減する。
(2)次世代コミュニケーションによる司法へのアクセス
メッセージングツールなどを通じたほうが雄弁になる世代への新しい司法アクセスの提供
(3)LPR
単に既存プロセスをIT化するのではなく、ODRにより司法アクセスへのプロセス自体をも劇的に変えるリノベーション的アプローチのはじまり
3.テクニカル面
ODRの場合、現時点では特異な技術を使わないと実現できないわけではないが、アプローチには大きく2通りあると認識している。
(1)既存プロセスのIT化
従来からあるIT化と同様に、既存の手続きをIT化していくアプローチ。申し立てのIT化、事件管理のIT化、期日のIT化、執行管理のIT化など。部分的にも着手しやすい。
(2)ODR的に司法プロセスのリノーベーション リーガルプロセス リ・エンジニアリング
たとえば、eBayでは、紛争解決をしようとすると「ヒアリングをされるように書き込んだりする」のではなく、最初から、売り手・買い手それぞれの典型的な紛争の問題点を書く種類から選択するところから始まる。これらはプロセスやヒアリングの手順を変えてしまっているが、それにより紛争解決を効率化していく。
(3)先端技術の適用
あえて新しい技術的なアプローチを入れるならば、
①AI(アルゴリズム)による過去事例からの紛争類型抽出や自動表示、解決案の提示などを行うようにしていくことや、
②ブロックチェーン応用により、国際間紛争のデータを中央集権的に持ち合わないようにしていくこと
などが検討可能であろう。
4.ファイナンス面
一番難しい部分である。すなわち、
(1)ODRの意義はコストであるが、そうなると単独でビジネス成立させるには、多くの紛争を扱うモデルが一つの案だが、紛争はないほうがよいという面もあり、紛争を増やすというマーケティング策が取りにくい。
(2)では、企業体などが資金提供するのはどうか?消費者紛争などでは、企業側が資金提供するODRの中立性が疑われる可能性もある。
(3)消費者取引では、トラストマークの機関と提携し、ODRの提供機関は費用を抑えた運営を行う場合もある。
公的な機関や認証機関が導入に取り組み、ベンチャーが現れ、資金が動き、利用者が抵抗なくアクセスするようになるまでに、なにをすればいいか。産官学一体とまではいわずとも歩調を合わせて取り組みが進めるといいが。。。