絶望スクール 著:石田衣良【読書/映画感想】20191029
池袋ウェストゲートパークシリーズの最新作。 我が青春の西口公園周辺が舞台の作品。ONE PIECEと同じく全巻読破継続中。
以下の4編が収録されている。
- 目白キャットキラー
猫を虐待し殺害しネットにアップするキャットキラーを捕まえて欲しいと依頼してきたのは線の細いしかし頭脳明晰な繊細な獣医志望の若い男性。マコトがいつもの情報網と機転の聞いたアイデアで、Gボーイズの機動力で犯人を追い詰める。
- 西池袋ドリンクドライバー
通学路を速度オーバーで暴走するポルシェを捕まえたが、交通指導員をする親子には悲しい過去があった。そして犯人は意外にも近くにいた。
- 要町ホームベース
引きこもりを救う組織が必死の家族からも搾取する。しかし、そこから逃れよう母を助けようとする中で社会へのふれあいが生まれて行く。
- 絶望スクール
夢の国で語学を学び働きながら夢を叶える希望を持って来日したベトナムからの若者を搾取する悪どい組織とそれを利用する日本の組織を潰しにかかるマコトとGボーイズ。
今回の作品では、どれも涙が堪えられない。理不尽なやつらから抜け出そうと必死で生きる純粋な若者、失った我が子の仇のために決意した親、我が子を立ち直らせようと必死で戦う親、それを見て決意する引きこもりの息子、夢を持ってやってきた兄弟の絆と彼らを救おうと戦うかつてのGボーイズ。
涙もろいのは年のせいか。しかし作品中のマコトも今回は涙を見せる。作者は同世代だが、そういった描写が増えてきたのは、やはり年のせいなのかもしれない。
そして、特に4編目。これからそうした事情に関わりのあるプロジェクトを進めていこうとしている身としては、そうならないように注意を払い続ける必要がある。夢を描いてやってくる海外からの若者を夢を砕いてしまうことはこの国の将来をも砕いていってしまう。
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最近は文庫本ばかり読んでいる。文庫になるということは、ハードカバー本が出てから何年かたっているということだが、それはある意味、本文化のデフレを進めていることになる。このシリーズはハードカバーで読み続けている数少ない作品だ。また舞台が学生時代を過ごした池袋だということで、思ったように過ごせなかったあの時代へのノスタルジーと後悔の穴埋めでもある。