院内刑事 フェイクレセプト【読書/映画感想】20200519
院内刑事シリーズ第三弾 大病院を狙うヤクザと極左を追い詰めろ! ビッグデータにあぶり出された不正。 チーム院内交番が本格始動!
というのはオビのコピー。
警察庁公安を早期退職した主人公が危機管理担当として病院内の様々な危機管理に対処していく。その第三作目。
病院で起こる危機管理といえば、医療事故やセクハラかと思うが、今回は、
- できちゃった婚の未来の総理候補、
- 詐欺集団と医療事故、
- 中国人エステと恐喝、
- 引き篭もり青年の爆発事故、
などが発生する中、院内危機管理を強化するために、警視庁から中途採用で優秀な刑事をリクルートし、体制強化を図る。いずれも最近実際に起きた(ような気もする)事件をモチーフにしている。
この作品で印象的なのは、事件とは関係なく短く登場するだけの「頑張る」という言葉についての短いエピソード。
採用面接で、
「あなたはどんな風に貢献するか」
という質問に
「頑張る」
と答える応募者。
面接官は「頑張る」とは具体的にどういうことをやるのかと質問を返す。「頑張る」というのは都合のいい言葉で、具体的に何をどうするのかはいわなくても、一生懸命頑張るといえば、やる気があるとみなされなくはない。しかし、少し意地悪に考えると、頑張るというのは過程のことで、結果にはコミットはしていないのだ。
徹夜して頑張る、
残業して頑張る、
身を粉にして頑張る、
とにかく頑張る、
死に物狂いで頑張る。。。
いずれも、結果には触れていない。何を成し遂げるかを語っていない。
また、
「どんな分野が得意か」
という質問に、
「一通りなんでもこなせます」
という看護師応募者。
「では臓器移植で一番気をつけることはなにか?」という質問に戸惑う。
実際は、汗を拭くことが重要で、なぜなら、手術中の臓器に汗が垂れては大変なことになるからだ。ただ「頑張る」ではなく具体的な行動や言葉に落としこんで語れるか、アピールできるかがポイントなのだ。
英語には「頑張る」に的確に該当する言葉はないという。あえていうなら、Hustle, Hang on, try hardなどだが、しっくりはこない。やれることはなにか。なにができるか。そこまで落とし込んで語らないと漠然とした「頑張る」に逃げ込むことになる。
程度の差はあれど誰もが自分なりに頑張ってはいるのだ。そこにさらに頑張れと声をかけることは今までを否定することも意味する。具体的な行動を導き出してあげない限り、頑張るという言葉やアドバイスは無責任なプレッシャーでしかない。
頑張るな。ただし、できることをやれ。
これが一つのアドバイスの基本だと教えられた。