日本ADR協会シンポジウム「ビジネスとしてADRの可能性」
去る11月20日に開催された同協会2020年のシンポジウム。
残念ながら、春の実務情報交換会はコロナ影響で、東京編のみ開催され大阪大会は流れてしまった。このままだと秋の10周年記念シンポジウムの実施は危ぶまれていたが、なんとかオンライン開催にこぎつけた。しかも、会場は虎の門ヒルズにオープンした「日本国際紛争解決センター(JIDRC)」」の最新の設備を利用し、上川法務大臣からもメッセージを頂き」コロナ第3波を乗り越える気概。
テーマの背景は、
「本年で設立10周年を迎えます。その間、認証ADR機関を含む数多くの民間型ADRが設立され、一定の成果を上げてきましたが、利用件数などの点でそのポテンシャルが十分に発揮されているとはいえません。また、日本の民間型ADRは、関係者の熱意に支えられたボランティアベースで運営されているものが多く、その持続可能性を盤石なものとしていくためには、ビジネスの観点からヒントを得ることも有益」ということである。
これまでもADR認定機関のビジネス状況については議論されてきたが、オンライン化の動きやコロナ禍の状況変化なども重なりテーマのようにビジネスとしてのADRを見つめた場合このままでいいのか、今後の改善策、対応策、維持策のヒントはどこにあるのか?ビジネスとしてADRを運営、奮闘する機関の先生、経営者の方々に議論していただいた。パネリストは、
- 家族のためのADRセンター主宰 小泉 道子 様
- 特定非営利活動法人ITS Japan法務主査 佐藤 昌之 様
- 東京大学大学院法学政治学研究科教授 平野 温郎 様
- 一般社団法人日本不動産仲裁機構理事 平柳 将人 様
- 公益社団法人民間総合調停センター事務局長・弁護士 三木 秀夫 様
パネルディスカッションでは、各機関の先生から運営の状況などが報告されたが、やはりビジネスベースに乗っているかという観点からはむずかしい印象が強い。海外事例も報告されたがこちらは案件規模が大きく、日本との比較としては大きく乖離がある。
このADRの特徴の一つである費用を下げるというメリットは、案件数を増やさないと売上規模が増えないが、件数を増やすと赤字になってしまうというジレンマ。
市場経済的ビジネスモデルを考えるべきか、制度を土台に考えるべきか。ODR化とうまくかけ合わせられないか、 ここ2ー3年で方向性が見えるかどうかというところだ。