ヒューマニティ【読書/映画感想】20210308
IT企業のSE集団による小説。SIerの現役社員が描く企業のリアル。
国家的な先端プロジェクトに配属された若手SEが、複雑なシステム、一癖あるチームメンバー、システムのユーザーである工場長、なぞのモグラと呼ばれる潜入者、連絡係。。。トラブルに混じって、恋心の感情、信じていた人の謎の行動。。。
シンギュラリティ=人工知能が支配する未来を巡っての攻防はどうなるのか。
主人公の「花」さんは、いつもAIスマホに、行動を確認している。ワインを選ぶ時も、店を選ぶ時も、はてはシステム開発の進め方に至っても、AIエージェントに聞いてしまっている。
最初は話し相手程度だったのだろうが、何度も会話をしているうちに、まずはAIに尋ねればひとまずの答えをくれる、いずれは、そのほうが楽になり、なにもかも「まず」聞いてしまうようになるのは想像に難くない。
AIの判断も、最初は人間が組むロジックによるプログラムにすぎない。ディープラーニングによる学習にしても、どのように学習して、どのように答えを導き出すのかは、やはりプログラム的なものだ。もしAIへの質問とその答えに基づいて行動するならば、それは、自分の行動を誰かに委ねていることになる。プログラムを構築したエンジニアを信じるのならそれもいいだろうが、そのエンジニアは本当に信じられるのだろうか。
作中の生産管理システムに限らず、あるノウハウをシステム化する際に、ノウハウの専門家はシステムの専門家ではない場合も多かろう。すると、そのノウハウをエンジニアに伝えるわけだが、エンジニアにノウハウを正しく伝えられたのか、エンジニアは本質を理解したのか、そのノウハウを正しくシステムかできたのか、その仕組みをノウハウの保持者は的確に検証できたのか。
ノウハウは常に進化し検証されそれをシステム化して結果も進化しながら検証されていく。そうなると、AIが人類を超えることってある?
やっぱり最後は人間、ヒューマン、ヒューマニティがシステムの根幹にあり続けるはずだ。
それにしても首謀者をクイーンと言っていたのは、女性が親玉と匂わせているが、これまで登場していた女性キャラの誰かとするとぜひ続編で登場することを望むな。