君たちは絶滅危惧種なのか 森博嗣【読書/映画感想】20210427
森博嗣ウォーカロンシリーズの最新。ハギリ博士と情報局員ウグイのカップル?は引退?して楽器職人グアトとロジとしてドイツで静かに暮らしているが、時々やってくる依頼にしぶしぶと対応する。今回も謎の巨大生物らしきモノと飼育員や警官が巻き込まれた事件の調査で呼ばれてバーチャルとリアルを行き来しながら調査し、例によってまたも大きな事件に巻き込まれていく。
死が遠くなった世界では、リアルにいることの意味が薄れ、記憶と意識をバーチャルへ移住することに意味を見出す人々も増え、移住がビジネスにもなりつつある。その際にリアルボディをどう処分するかも課題となっていて、なんらかの形で死亡した際に、あとで詮索されないようにボディ自体を処分することも必要になっている。今回の巨大生物による失踪はそれに類するものかと推測したグアトはその路線から調査を進める。
今でも、つらいことがあると、ここではないどこかへいけばどうにかなるとおもいがちだ。仕事もプライベートでもそんな気分になることがあるが、どんなに技術が進んで寿命さえもコントロール下に従えても、ここではないどこかに幸せがあると思うのか。そういえば、ゲームの世界に没頭してしまうのもその傾向なのか。単なる一時的な逃避ではなく、肉体さえも捨ててしまうバーチャルへの逃避は一種の自殺ではないのかとも思える。
一方で、逃避すらしないで、このまま待っていればやがてどうにかなる、また元どおりになると思い込み、何も変えずになにもしないでいるという傾向も多いのではないか。平和で恵まれてきた日本ではむしろこちらのほうが多いのかもしれない。
俺たちは絶滅危惧種なのだ。たぶん。