紛争でしたら八田まで(6)【読書/映画感想】202100628
アメリカの地方創生はうまくいったが、結局労働者は中国人が占めていた。地元民を使いたかったが、そこは移民の国アメリカ。自己矛盾にもなりかねない移民締め出しには政治家は踏み込めない。そこが妥協点か。戦って勝って行くばかりが解決策ではないのだ。大人の対応、八田百合。
イギリスの燃える青年の恋心+サッカーに勝たせたい熱意を聞いた八田はサッカーチームの戦いにも陸地を侵略していく大陸型の戦い方と海に囲まれた国の戦略の違いを応用し、エリートチームを苦しめる。
世界で3番目に小さい国ナウル共和国の土地買収を依頼されるが来てみると資源国ナウルの未来への葛藤に直面。渡鳥の中継地点であるナウルは、長い間の鳥のフンが化石化したリン鉱石による豊富な資源により国民が働かなくても裕福になってしまった国ならではの深刻な悩みに、政治的な対抗勢力となるグループを立ち上げる。
武力などの力技のみによる真っ向勝負ばかりが戦いではない。総取りではなくどちらにもメリットを残しておく決着の付け方は、裁判ではなく調停であり、これからもどちらもその場所で生きていくために、むしろ白黒をつけない決着をよしとするところなんぞは、紛争解決の極み。三方一両損というか、WInーWinの関係というか、長屋の御隠居による采配だ。白黒付けない方がいい時もある。
中国、アメリカ、ロシアなど、地勢的に大陸にある国の戦い方は、続いた土地を侵食し、陣地を広げていくことで拡大し勝利していく(ランドパワー)に対して、日本やイギリスなど海に囲まれた島国は、港や運河などチョークポイントを抑えることで、相手より優位に立つ戦い方(シーパワー)、歴史的にもこの両方を兼ねた戦い方を選んだ国は負けている。シーパワーの日本が中国大陸に攻め入ったこと、ランドパワーのドイツがシーパワーで領土を拡張しようとしたこと、最近では中国の一帯(ランドパワー)一路(シーパワー)果たしてこれはうまくいくのか。
世の中は紛争に満ちている。安く買いたい顧客と高く売りたい営業。いい人材をリーズナブルに取りたい人事となるべく高い給料で雇われたい会社員。これを戦いにしてしまうといつでも争いばかりになる。
八田は、6巻では、どちらにもいい面をもたらす「戦いではない解決」に路線を変えてきているのかもしれない。