半蔵門御散歩雑談/ODR Pickups

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このブログは、株式会社ODR Room Networkのお客様へのWeekly reportに掲載されている内容をアーカイブしたものです。但し、一部の記事を除きます。ODRについての状況、国際会議の参加報告、ビジネスよもやま話、台湾たまにロードレーサーの話題など、半蔵門やたまプラーザ付近を歩きながら雑談するように。

リアルの私はどこにいる?Where am I on the real side?

リアルの私はどこにいる?Where am I on the real side?【読書/映画感想】20220510

 

森博嗣氏のウォーカロンシリーズの続編 WWシリーズの5作目。ハギリ博士は、楽器職人グアトとして、情報局員ウグイはロジとしてドイツの田舎で夫婦?みたいな生活を送る。それでも調査依頼がくる。バーチャル世界から「リアルでの自分が行方不明になった」という調査依頼。

 

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未来では、医療の発達により人間は不老に近くなるが、臓器入れ替えや血液浄化は子供が作れる遺伝子になんらかの悪影響を及ぼし、治療を受けた人間からは子供が生まれなくなっていた。バーチャル世界が発達し意識をバーチャルに移せるようにもなり、ログインしたまま長く滞在する場合も出てくる。その間に肉体が行方不明になる事件が発生したという報告が。

バーチャル世界はまるで、今話題のメタバースだ。確かにこんな未来はすぐにやってきそうだ。そしてログイン中ヘッドマウントギアをつけたままならその肉体は無防備で、肉体が害される、傷つけられる、誘拐される、殺される、入れ替えられるリスクが生じる。そのままバーチャルから戻れなくなるリスク。しかし、そんなことをする理由があるのだろうか。

今は想像しにくいが、映画マトリックスなどにあるように、電極を接続して意識もバーチャルに入るようになれば、ログアウトしなければ自由が効かない状態になるだろう。リアルが傷つけられるリスクに加えて、バーチャルの人格から逆にリアルの体に電極を経由してログインされてしまうことだってあるかもしれない。肉体が乗っ取られる?

 

本書中、バーチャル国家が独立宣言をする。リアルな国境や国籍とは関係なく、バーチャル国家に属する人々。バーチャル国家が国と認定されてば、それはどういうことになるのか。肉体は日本人、バーチャルでは米国人。またはその反対。複数国家に所属することもできるのか。法整備も必要になる。税金は?結婚は?

人工知能が、バーチャル内だけで人格形成ができるまでになった場合、リアルにはいない国民が存在することになるのか。その場合、投票権を持ち、投票できるようになるのか。こうした不正(?)の可能性もありうるとしたら、民主主義も根幹の信頼の前提が揺らいでしまう。そしてそれは把握できるのか。

 

ところで、この「架空の人々による投票」と同じようなテーマの映画があった。

amzn.toなんらかの理由で逃げたい人を集めて衣食住セックスまで提供され何も考えずに過ごせる危険のない町の住人になれるが、塀から離れると埋め込まれたチップによる脳内ノイズ効果で町からは離れられない。時々バスに乗って、受け取った住民票と投票用紙で指定された候補者に投票しにいく。取引する施政者と町の幹部。名前もなくただ人数としてだけ存在する住民。投票や新薬の臨床試験を受けるために意思のない「数」としてだけ存在する。逃げたい、姿を消したい人々と数が欲しい組織、利害が一致しているからいいのか?不気味なありそうな未来。

 

人間は、我々は頭数じゃない。自分の意思を反映させるようにならなければ、存在の意味はなくなる。