半蔵門御散歩雑談/ODR Pickups

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このブログは、株式会社ODR Room Networkのお客様へのWeekly reportに掲載されている内容をアーカイブしたものです。但し、一部の記事を除きます。ODRについての状況、国際会議の参加報告、ビジネスよもやま話、台湾たまにロードレーサーの話題など、半蔵門やたまプラーザ付近を歩きながら雑談するように。

複雑ワードの”共通認識”は深掘りを妨げる

複雑ワードの”共通認識”は深掘りを妨げる【たまプラビジネス余談放談】20220823

 

耳ではよく聞いて知っている言葉が登場したとき、ふと違和感を感じつつ知っている言葉だから掘り下げずにわかったようにしてやり過ごすことがないだろうか。誰も異を唱えないのでそのままになる。深掘りされないまま。。。

 

先日友達と話していて「必要なのは”エネルギー”を注ぎこむことなんだ」という発言があった。”エネルギー ”って言ったらガソリンとかが思い浮かんでしまう。あるいはなんらかのパワー、動力源か。「ふんふんエネルギーだね」と、はっきりはしないが共通理解で、「何らかの力、勢い、努力」みたいなものが浮かび、ぼんやりと合意。でもそこで会話が深掘りされなくなってしまった。なぜだろうと考えると、”エネルギー”という汎用的なワードにまとめてしまうと本当に言いたいこと、その場で共有したいことが、エネルギーという誰もが理解できてしまう言葉で全員を思考停止、会話停止にしてしまうのだろう。本当は、ここでいう”エネルギー”の正体を掘り下げないと議論が深まらないのに、その言葉でみんながそうだよねと納得してしまう。そのエネルギーの中身はなんなの?という質問につながりにくくしてしまうのだ。

 

「物事を進めるのには”エネルギー”が必要なのだ」という文脈だった。実際には、「企画や物事を進めるためのエネルギー」という文脈。人間が判断したり決断したり、周囲を巻き込む、やる気にさせる、やる気になるときの”エネルギー”とはなんだろう。

何かを判断、決断するときに、過去からの知識や経験だけからだとどうしても判断ができないことがある(よくあるのは「前例がない」とかね)。その企てを進めていくために周囲を巻き込み、そのために誰かを説得して人材を巻き込んでいく必要がある。巻き込んでいく熱意、自分を奮い立たせるために自分を説得する何か、こういう心理的な力がエネルギーなのだとすれば、その正体はなんなのか。そのことを議論し、つきつめなければいけないが、”エネルギー”という言葉の共通認識があることで議論、追求をとめてしまう。

 

こうこう場面は他にも心当たりがある。

 

たとえば、”シナジー”という言葉もよく使われていた。A社とB社の提携、部門Xと部門Yの協力、その目的を検討する際に、提携や協力によるシナジー相乗効果が見込まれるという議論。みんなシナジーという言葉で、「そうだな、シナジーが期待できる」という発言が続く。実際にこのようなビジネスの現場なら、「シナジー相乗効果が重要だ」というのであれば、どのようなビジネスのどのような相乗効果なのかが一番の関心事だが、”エネルギー”と同様、そのぼんやりとシナジーの共通認識が議論を深めることをうやむやにしてしまったことを記憶している。

 

こういう複雑ワードの共通認識は、議論を抑え込むこともできるので、企画を進める立場にとっては便利なこともある。しかし、今にして思えばもっとそこを突き詰めて議論してアイデアを出して煮詰めておけばよかったなと反省する面もある。そういうことに気がつくのにそれなりの時間を要して、関わらなくなってから気が付くのも凡人だからなのだろう。

 

だからなのか。

若い人にそれを教えたくて説教臭くなる。

そして「ネタバレするなよ」と言われるのだ。