【ODRピックアップ】20151118 恒例ODRの授業@慶応大学
2008年から毎年この時期になると呼んでいただいて、法科大学院の学生さんにODRに関する授業を行なわさせていただいています。
昨年のまとめ。
実は、今年もそれほど大きな変化はないのですが、国連のワーキンググループで継続しているODRに関する法規範の作成、手続きの共通化などを目指した検討が、まとまりつつ。。というかまとまらない方向にまとまりつつあるというのが、ODR界としては、やっぱりねと思いつつも残念!なことです。
難航していた理由の最大のポイントは、欧州、日本などに共通する「消費者と事業者の事前の合意に関わらず、調停、仲裁、裁判を選べる」という消費者保護が強い考え方と、米国の「あくまで合意優先」という契約至上の考えがぶつかったまま5年近く議論をしてきたわけですが、その間に欧州は域内のADR指令、ODR規則が決定、施行されつつあり、”もう域内でやるからいいよ”と言い出した欧州と、”APECなど他の経済協力内でやろうか”と言い出した米国で、実質物別れで、これまでの議論を「国連レコメンド」と言う名の単なるNOTEとして出すだけになりそう。。。
しかし、事業勢はもたもたしているなら始めちゃうよとばかりに、現実的なツールを公開しはじめました。
欧州のYoustice.comでは、以下のようなフレームワークを用意しています。
Youstice - Shopping complaints handled and solved
1)欧州のルールに対応して、ショップ側は予め、認定されたODRプロバイダーを複数選択しておくことができます。例えば、SMALLプランだと、月額13USドルで、2つのショップが2つのODRプロバイダーを紛争解決に用意しているということ。
2)消費者は、無料でショップに対してクレームをし、ショップが用意したODRプロバイダーを介して、紛争解決することができます。(最初は、直接ショップとオンラインで話をして、解決する場合もあります。それで解決できない場合、より公平な決定をしてくれるのが、ODRプロバイダー)
3)ただし、消費者がもしも「(事業者がアサインしたのではない)中立的なODRプロバイダーを間に入れたければ、その費用を一部負担する場合もあります。
これは、欧州の新しいルールODR規則で、ODR事業者を各国とも用意しなければならなくなったので、こうしたシステムが実現するという側面もあります。
日本は、ODR事業者も少なく、例えばIT業者がシステムを開発してそれをODRビジネスにしようとしても(はっきりしない面もありますが)弁護士法によるシバリもあり、このシステム導入される段階になっていません。
むむ残念。
今日の授業で新しく法曹を目指す生徒さんたちが、この分野を目指してくれることを。
ODR FORUMでは、毎年言われています。
「次は日本で開催するんだろ?」
* * *
「最近の学生は大人しいくてね」
と先生は嘆いておられましたが、
「初期のODR紛争は匿名で争われたのでしょうか?だとするとどのように執行したのでしょう?」
「運営上の財源は、各国で様々な形態があるようですが、産業界、国家、地域連合など、どの方法ならうまくいくのでしょうか?」
授業終了後も、残って質問する学生さん。
「日本は、15年程度遅れてODRがスタートしたと見られますが、なかなか進まないのは開始の遅れが理由ですか?」
いくつかの質問もしっかり出てきて、秘めた思いの学生さんたち。