中国は越境電子商取引に照準を合わせる【半蔵門ビジネス雑談】20191122
深セン市市場監督局、深セン中新電子商取引保証促進センター、深セン深セン標準推進協会の後援により深センで開催された
「2019 International Network Business Environment Construction Forum and the 2nd Shenzhen Internet Integrity Conference」。
会議テーマは、「共同建設、共同統治、共有」。
深セン市は、電子商取引システムを強化し、それを全中国に広げようとしているそうだ。(中国の場合、どこでもそういう大風呂敷だけど)
市場監督局は、公正かつ透明で予測可能なビジネス環境を構築すると同時に、電子商取引の信頼できる取引環境の構築を積極的に推進し、事業者の識別と資格の検証、品質トレーサビリティ、オンライン紛争解決、信用供与などの多くのサービスを通じてネットワークビジネス環境の構築を積極的に推進していくと述べている。
ここで越境取引とは、主に、香港、マカオと中国を示している。三国はMOUを締結し、ますます協調を進めていくことになる。
中国以外の国際標準への適合も狙っている。欧州連合の北京大使、WTAの創設者の一人シンガポールの教授を迎えて協力体制を築くことになる。
中国では、2018年に成立した中国電子商取引法が、2019年1月に施行された。
これにより、
1)個人での販売でも営業許可証が必要となり納税義務が生じる。違反は刑事責任を問われる。
2)ECプラットフォーム事業者は、出店者の資質への責任、知的財産侵害への責任も問われることになる。
また、
3)ECサイト上では、かならず中国語での説明が必要となる。これは消費者を守ることになるが、同時に参入障壁ともなる。
特に1)は、個人を狙い撃ちする法律で、日本での爆買いから転売をする日本にいる個人を補足しようというもの。日本での爆買いに影響が出ること必至とみられている。
しかし、2019年上半期の税関の統計では、
越境ECの輸入商品品目数は2.2億個(前年比20.9%増)
物流貨物は、全体で456.5億元(前年比24.3%増)
新法令が施行後も、多くの消費者が越境ECで外国商品を購入しているようだ。
ところで、越境電子商取引は越境ビジネス取引の最終形なのだろうか。
確かに、製品がどれくらい売れるかわからない状態で越境した他国の現地に代理店や支店を物理的に構えるのは失敗すればコスト高になる。だから、ECサイトを整え、海外からアクセスできるようにして注文を取ってみるのはインターネットが普及した現在では正しい手法だ。
ただし、売れることがわかれば、現地で売りたいという事業者も現れるだろう。すると、ネット販売だとしても、現地倉庫に在庫を持って現地で売った方が、物流面ではよいことになるだろう。もちろん、現地倉庫に品物を置くことになれば、課税面での変化はでてくる。しかし、輸送費を抑えて輸送時間も早くなれば、消費者はそちらを選ぶようになろう。
さらに進めば、現地生産のほうがより製造原価は抑えられる。結果、成功した商品は越境取引ではなくなる。これが、「製造者にとっての最終形」だろう。
では越境商取引そのものをビジネスとして行う事業者にとってはどうか。(製造者と越境商取引事業者が別の場合だ)製造者に代わってECサイトを整え、海外からアクセスできるようにして注文を取ってみる。より多く売れそうなら、製品を送るときにまとめておくるようにして越境のネックとなる物流コストを分散させ下げることにより、現地在庫がなくても消費者が買いやすいようにすることができる。この事業者にとっては、現地生産になってしまっては商取引がなくなってしまうので、そうでない製品を発掘し扱い続けることが成功の定義となる。
成功定義は、どの立場なのかによって変わるのは常だ。
製造者にとっては越境取引は過渡期に過ぎない。あるいは、製造者は越境市場をサブ的な市場として捉えていくのかもしれない。または、製造者の越境取引最終形も、電子商取引となるのかもしれない。
それなら、過渡期といわず、現地生産にまでは踏み込まない状態で成功といえる。
(腕立30)