【ODRピックアップ】20160623 ECの夢とジレンマ
楽天は、スペインでの電子商取引から撤退をすると報道されました。9月までに緩やかに撤退とはなんとも日本的に従業員の円満な解雇をするためです。
ニワトリと卵
記事によれば、その理由は、(モール型の競合である)Amazonの利用率が4600万人の国民の30%なのに対して6%にしかならなかったということですが、既に市場参入した先行者が成功している場合、ECの参入は難しいことは浮き彫りになったと思います。
後発事業者の場合、利用者を獲得するために、まず認知度をあげるために、広告を中心とした投資は避けられません。同じ意味あいで、キャンペーンなどを実施をするにも、出店者が少ないと消費者も集まらない、消費者がこなければ出店者も二の足を踏むという「ニワトリと卵どちらが先か」状態にならないよう、主催者が利益を度外視して、出店支援や消費者への特典などの負担もしないとインパクトも与えにくいでしょう。
さらに、サービス品質を維持した上での、物流拠点や配送手段などに対してのコストもかかります。特に、参入当初は、自前のそれではなく効率化も追求しにくいでしょうから、これも、利益圧迫の要因。Amazonがスゴかったのは最初からその拠点に投資してしまったことで、ずっと赤字体質が続いても持ちこたえるだけの体力と投資家の理解を得られたことでしょう。
そうなるとやっぱり電子商取引も巨大な資金がすべてなのか?
いやそんなはずはない!越境での電子商取引は、拠点を出す必要もなく、日本にいながら米国や中国や欧州やアジアに、日本のスバラしい製品を販売することができる夢の手段だった筈。巨大な資金は必要なかった筈。日本でしか売っていない商品、日本ならではの品質の品。ただし、在庫はしていないので、輸送に時間がかかり、送料もかかり、結果として、消費者の支払う額はちょっと高くなっている。それでも、欲しい人が買ってくれる。
しかし、ひとたび「これは売れる!」と判明した商品には、越境だけでなく、販売先の国内でも類似の競合品が参入してくるでしょう。商品が大量に輸送されやり、国内製造にも踏み切り、そうなると物流コストだけでも一気に下がり、もはや最初に市場を発見した小規模な拠点を出していない日本にいながら越境販売する事業者はなす術がないかもしれません。
大量に販売するという夢ではいけない?
そこは一つの考えどころです。確かに、少量生産にしか向かない特注品や限られた技術や個性でなりたつオリジナル品などに絞って販売すれば、前述の大資本による後発参入には至らないでしょう。その場合、ビジネスの規模は一定のレベルで頭打ちにならざるをえません。
大量販売を目論んだ場合には、先行参入時に資金を用意するか、後発者の資本によっても市場を奪うことができない特徴を備えるしかないのです。
結局、ECに限ったことではないわけで、普通に事業戦略をしっかりたてないといけないということです。