【ODRピックアップ】20160406 ”秘密の存在が秘密”でないと”秘密”にならない
映画「ウォール街」で、当局に摘発され懲役に服した主人公ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)は、その資金を娘の名義でスイスの銀行に預けました。強固なセキュリティと秘密保持により、預けた本人も引き出せない、所有者である娘も知らないというスイスの銀行の秘密保持は、いろいろな映画や小説あるいは実在の資金の隠し場所として知る人ぞ知るもの。
しかし。とうとう。
「何世代にもわたって、スイスの銀行は高額の手数料により、資産を各国の税務当局の目から隠してきた。だが、金融危機をきっかけに規制強化を求める声が強まり、先行きに不安が漂い始めた銀行側もいやいやながら、方針転換を受け入れざるを得なくなった。 」
隠し資産がスイスの銀行口座にあるという図式は、過去のものになっていくということです。あるいは、更に高額の手数料なら、応じてもらえるのか。
「スイスに銀行口座があるか?」
という問いに対して、これまでは、口座の有無も非公開あるいは未回答になっていたのでしょうが、
「スイスは2017年、これまで貫いてきた秘密保持をやめ、他国との銀行口座情報の交換制度に応じる方針だ。」
ということは、少なくとも口座の有無はわかるようになるということで、「ある」と回答されれば、もはや疑わしいことになるので、スイスの秘密保持は税務当局の目を逃れられなくなるということです。
守秘義務を順守する銀行は、1934年のスイス銀行法で、故意の脱税は詐欺行為ですが、申告漏れの疑いがあっても顧客の銀行口座情報を税務署に提供できないようにされており、違反すれば懲役を含む処罰を受けるのです。しかし、2009年に外国人顧客に対しては、故意の脱税と申告漏れの微妙な違いは事実上なくなっています。
背景にあるのは、脱税。
外国人がスイスの銀行に預けている金額は、2兆ドルで世界一位。これらは、所有者名も明かされていないものもあり、海外からのアクセスは実質難しく、脱税の手段とされていたが、摘発の気運が高まっておりEUやオーストラリア、英国とは協定を締結し、米国とも交渉中。
さらに、武器密輸、独裁者の隠し資産などへも利用されているとの憶測から、秘密開示路線に展開しつつあるということです。
私が、口座を創るまで秘密保持のスイスを堅持してほしかったのですが、残念。香港かシンガポールに創りましょう。