半蔵門御散歩雑談/ODR Pickups

株式会社ODR Room Network

このブログは、株式会社ODR Room Networkのお客様へのWeekly reportに掲載されている内容をアーカイブしたものです。但し、一部の記事を除きます。ODRについての状況、国際会議の参加報告、ビジネスよもやま話、台湾たまにロードレーサーの話題など、半蔵門やたまプラーザ付近を歩きながら雑談するように。

中国でオンライン陪審とはね

中国でオンライン陪審とはね【たまプラビジネス余談放談】202202

 

パンデミックで、オンライン取引はこれまで以上に増えた。マーケットプレイスでの取引はもちろんのこと、個人間のオークションや取引も一般的になった。その結果、トラブルも増えている。意図的に騙す目的で参入してくる悪者たちは、犯罪的でありその問題は警察にお任せするとして、 ここでは善意の取引の中で、

  • 物流の問題により発生する遅れなどのトラブルや
  • 色、雰囲気などニュアンスの違いによる商品への期待違い、あるいは、その結果の
  • 返品によるトラブル、返品送料をどちらが持つかと言うトラブル、さらには、
  • 商品の破損
  • または例えば、壊れたところがある物を販売した場合それが伝わっていなかったことによるトラブル

など一般個人間の取引によって生じるトラブルも増加していることを取り上げる。

 

そうしたトラブルを解決するには既存の裁判は、費用対効果あるいは手間の面でそぐわない。だからといって紛争解決手段がないことで泣き寝入りしてしまうのはせっかく立ち上がってきたオンライン取引の普及を阻害してしまうことになる。こうしたトラブルを埋もれさせないで解決し、より健全な取引をさらに発展させていくためには、扱い安く安価で便利な紛争解決が必要になってくる。

ODRと呼ばれるオンライン紛争解決は、世界的には2003年ごろから登場し、日本でもここ2〜3年で法的枠組みも含めて議論され、いくつかのサービスも試験的に登場してきた。

今回紹介するのはそうしたサービスの中でも、オンライン陪審的な仕組みを備えたサービスである。

 

中国の紛争解決でオンライン陪審が判断をしてくれるサービスが登場した。「カンガルー陪審団」と呼ばれる一般市民による陪審が判断をしてくれる。こういう民主主義的なサービスがネット通販に限って中国で登場したのはとても面白く興味深い。

ネット販売のトラブルは“陪審員”が解決:中国で広がる「紛争解決サーヴィス」 | WIRED.jp

 

同じような仕組みの一般市民によるオンライン陪審的なサービスは十数年前からアメリカ西海岸にも存在している。以下のリンクに示すようなSideTaker(サイドテイカー)と言うサービスである。

https://www.sidetaker.com/ サイドテイカー 世界のみんなに決めてもらおう

これはネット通販による問題だけでなく、政治的な問題や家庭内の問題、友人間の問題など、紛争全てに適用することができるサービスである。 例えば、同居している友人と折半している家賃の比率がおかしいなどと思った場合、その問題を相手と話し合うと同時にこのサイトにアップすることで、相手を公開の場に呼び出し、お互いの主張を公開して、登録されているメンバー(ここでは「オンライン陪審団」とは呼んでいないが)による投票によって勝ち負けを決める。もし結果に不服がある場合には有償で登録してあるメディエーターを依頼することができる。

 

 

中国の場合もアメリカの場合も一応の決着がつくわけであるが、問題はその結果を実行に移させるための「執行力」はどうなるか、である。裁判の場合は、法律制度でその結果に従うことが決められているわけで、従わなければ裁判所が強制執行することが可能だが、裁判外手続きの場合、たとえ陪審団に「あんたが正しい、こっちが間違い」と言われたとしてもその結果に不服があれば従う必要は無いわけで、「世間のみんなもそう思っている」ことがわかっただけで、前述の家賃の比率不満問題は解決したとはいえない。賠償金を支払う必要もないわけで、強制力を持たないのが最終的には問題となるわけだ。

この点は評価システム等が提供されていることがある。もし決定に従わなければそのサイト上で「悪い評価」が付けられ、取引をする人の間での信用を失い、最終的には市場から締め出されるという、行って見れば「ソフトな執行力」とでも言う仕組みだ。しかし、”勝った”はずの当事者は何も手にすることができないままだ。

このようなマーケットプレイスにおける信用スコアのようなサービスは以前から存在している。代表的なのはアメリカのeBayと言うオークションサイトでの評価システムである。もっとも同じような評価システムはアマゾンや日本でもYahoo!あるいは楽天などにも搭載されていて、ある程度の効果は得られているようだ。

 

こうした執行力については、裁判外紛争解決の法的枠組みの中で、執行力を持たせる動きが始まっている。これについては別途当ブログでも取り上げていく予定だ。

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