ODR Pickups/半蔵門御散歩雑談

株式会社ODR Room Network

このブログは、株式会社ODR Room Networkのお客様へのWeekly reportに掲載されている内容をアーカイブしたものです。但し、一部の記事を除きます。ODRについての状況、国際会議の参加報告、ビジネスよもやま話、たまにロードレーサーの話題など、半蔵門付近を歩きながら雑談するようにリラックスしたお話中心。

APECがODRを推進する

APECがODRを推進する【半蔵門ビジネス雑談】20181113

 

2018年は、ODRが動き出した記憶に残る年になった。

 

まず、日本ADR協会がITがADRを活性化するかというテーマでシンポジウムを開催。

www.odr-room.net

10月に一橋大学で日本では初めてとなる国際的なODRシンポジウムが開催され、

www.odr-room.net

 

 

そして、続いて、APECが共通のODRのフレームワークを作り、パイロットプロジェクトを開始することになった。その作業部会が、大阪の日本国際紛争解決センター(http://www.idrc.jp)で開催されたワークショップ=APEC Workshop for developing a Collaborative Framework for ODRだ。今回は、そのフレームワークのドラフトについて議論された。

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当社も「Practical and Institutional Perspective of ODR」のセッションにて発表。

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さらに、最終日の最後のセッションで、全体の議論から特に議論されるべき点や、漏れている点を指摘するセッションのパネリストにもなったので、途中のセッションをよーく聞いていないとやばい。で、今ままでになく真剣。

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今回は日本がホスト国だが、会議のコーディネーションだけでなく、ランチやディナーまで、瓜生&糸賀法律事務所パートナーで立教大学の早川教授がアレンジ。

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このフレームワークは、UNCITRALのODR ワーキンググループの結果である「テクニカルノート」をベースにしている。

以下、その概要。

  • APECのメンバー国の小企業から中小企業を対象に、
  • 法律や言語が異なる国境を超えた企業間取引(B2B)で生じた紛争を、
  • オンライン上の紛争解決手段で解決する。
  • 消費者の紛争(B2C)は扱わない。

 

  • ODRは、APECのフレームワークのルールに乗っ取ってAPECのパートナーODRプロバイダーが担当する。APECはこれらODRプロバイダーをパートナーとしてメンバー国の企業に利用を促進する。
  • ODRプロバイダーは、個人情報や機密情報に配慮・注意しつつ毎年のODRの状況を報告する。

 

  • メインのモデルルールは、分析、直接交渉、調停、仲裁のフェーズの順にすすむ。
  • それぞれのフェーズには一定の合理的期間があり、各フェーズで合理的な期間内に解決できない場合には、双方の合意のもとで次のフェーズに移行する。
  • 最初は当事者間での直接交渉がODRプラットフォーム上で行われる。解決に至らない場合は調停フェーズに移行する。
  • 調停フェーズでは、ODR管理者は、調停人を割り当て、当事者双方が合意すればその調停人を介して調停が行われる。調停が合理的な期間で解決できなかった場合は、仲裁フェーズに移行する。仲裁の結果には拘束され適用準拠法により執行される。
  • プロセスの進行過程で双方からODRプラットフォームに書き込んだ内容は書き込まれると同時に相手方とODR管理者に通知される。通知後7日以内に返信をしなければならない。

 

  • 各国はODRプラットホームを用意する。(すでに独自に運用開始している国もある。ちなみに日本はまだ。)
  • パイロットプログラムに参加するODRプロバイダーは扱った案件の状況をAPECに報告する。しかし、情報は秘匿しなければならない。

 

*詳細は最終的な文書を待つ。

 

ODRに限らず、ADRでも難しいのは、相手がこの紛争解決プロセスに同意して参加することだ。取引の前に紛争はODRで解決することに合意することが前提になる。そのためには、裁判よりODRがよいことを周知していくことがとても重要だ。

小企業にとって、ODRは裁判よりよいだろうが、それ以上に泣き寝入りよりましかどうかがポイント。いかにODRを使うように持っていけるか。

また、ODRが始まったら、ODRプラットフォームでのやりとりが相手へ通知され、相手がそれを見たことがわかるようになっていることが望ましい。メールではそれがわからない場合があるので、メッセージングツールなどの既読機能的なものが有効だ。

 

  • また、最終的には大量のデータが蓄積され、AI的な機能も含まれて来るだろうが、それらは可能性に言及し、今後の改定に組み込まれていくだろう。

 

などなどが、話し合われ、今後の方向性が合意された。

 

ひとつだけ議論がざわざわしたのは、「ODRで扱った紛争の統計で、地理的データを出そう」という提案に対して、中国が強固に反対したこと。意味があるのかどうか?という反論だったが、おそらく、取引の紛争が中国で多くなるおそれを見越したのではないだろうか。消費者紛争では圧倒的に中国が多いし。

 

という流れで、無事にまとめのセッションも終了。非常に充実した会議であったのだ。私の指摘した意見も取り上げられ役目も果たせた。

 

ちょっとホッとしている。