【ODRピックアップ】20131219 あるわけないけどありそうな
ある日のある企業。ぼんやりと眠そうにPCの注文管理画面を見ていた担当者は目を見開いて、寝ぼけているのではないことを確認するために、隣席の同僚を呼び寄せた。そして二人は、画面上に表示されている膨大な注文データを確認して、顔を見合わせる。ピコッ。ピコッ。ピコッ。注文は増え続ける。
すぐにデータをプリントアウトし、社長室へ。
「なにごとかね」
退屈な表情を見せる社長に、
「注文が大変なことに!」
そして社長もグラフを見て愕然。
社長は、気を取り直して受話器を取ります。
「復活したぞ!どんどん印刷してくれ!」
指示を受けたアジアの工場長は、工場全部に号令!
「よーし!!どんどん生産しろ!」
「輸送トラックが足りないぞ!」
「船も足りない!」
「紙が足りないぞ!」
森林伐採の現場もフル稼働。
合わせてパルプの株式相場も活気づきます。
「パルプ株を、買いだ!買いだ!」
かくして、量産された紙の百科事典が出荷されて行く。。。
場面変わって、ある家のリビング。
赤ちゃんがタブレットをいじって遊んでいます。ピコッ。ピコッ。ピコッ。
ママがソファに座って、坊やが遊ぶのを見ています。ピコッ。ピコッ。ピコッ。
「あの子、あれ大好きなのよね」
ピコッ。ピコッ。ピコッ。
タブレットの画面には、百科事典の注文ページ。
押し続けているのは、「すぐ購入」ボタン。ピコッ。ピコッ。ピコッ。
これは、ちゃんとマーケティングしてますか?というAdobe社のCM。
赤ちゃんがイタズラでタップしている注文を真に受けて、一気に増産して出荷してしまうような、マーケティングしていませんか?Adobeなら、こんなヘマはしませんよというCMです。
CMに登場している百科事典のメーカーは、エンサイクロペディア アトランティカという会社で、ブリタニカのパロディです。実際のブリタニカは既に、紙の百科事典からオンライン製品に舵を切っており、実際にはこんなことは起こりえないでしょうが、CMでは、時代に即したマーケティングが出来ていないから、まだ紙の辞典を作ろうとしていて、オンラインシステムの購入確認画面もないような注文システムを提供しているから、こんな間違った情報で増産してしまうのですという意味が込められています。
また、赤ちゃんが一回のタッチで注文が成立してしまう造りの確認画面がないシステムでは、注文そのものが法的に無効となってしまいます。これは電子契約法を根拠としています。
電子契約法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H13/H13HO095.html
経済産業省の説明資料
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/e11213aj.pdf
第三条の特例。
「B2C(事業者・消費者間)の電子契約では、消費者が申込みを行う前に、消費者の申込み内容などを確認する措置を事業者側が講じないと、要素の錯誤にあたる操作ミスによる消費者の申込みの意思表示は無効となります。」
あるわけないけどありそうな。