ODR Pickups/半蔵門ビジネストーク

株式会社ODR Room Network

このブログは、株式会社ODR Room Networkのお客様へのWeekly reportに掲載されている内容をアーカイブしたものです。但し、一部の記事を除きます。ODRについての状況、国際会議の参加報告、ビジネスよもやま話、たまにロードレーサーの話題など、半蔵門付近を歩きながら雑談するようにリラックスしたお話中心。

【ODRピックアップ】20160108 やめる決断が一番難しい

【ODRピックアップ】20160108 やめる決断が一番難しい

 

1996年、私はイスラエルのとある製品について、当時の上司の指示を受けて検討し、約半年間のリサーチの後、「荒削りではあるが、日本での製品化を共同で行えるならば、期待できる」と結論付け、契約に踏み切りました。
そして、数年の共同プロジェクトの後、残念ながら思惑ははずれ、様々ないきさつがあって、相手企業との訴訟(仲裁)となり、そのままさらに約8年間の紛争処理期間を過ごしました。(以下参照)

紛争の体験1(偽証はできるものなのか)|

紛争の体験2(真実を証言する)|

紛争の体験3|

紛争の体験4|


訴訟中に、相手方からだけでなく、代理人の弁護士からも何度も指摘されたのは、

「何故、"この"時点で契約を中断しなかったのか?」
「なぜ、"その"時点で、ビジネスをやめようとしなかったのか?」

ということでした。

「明らかに相手の行為が原因でビジネスがおかしくなりつつあったことを認識していた」
と主張しているのに、その時点で契約をやめることを提案しなかったのは、「本当は相手が原因ではないのではないか?」という疑念としてクローズアップされてしまったのです。

f:id:emandai34:20150914101943j:plain

 

  *   *   *

 

子供の頃の草野球。
得点差があって、9回裏2アウト2ストライクと追い込まれても、


「最後まであきらめるな」
「あきらめない事が大切だ」


と教えられてきました。勿論これらは様々な意味で正しいと思います。

しかし、ビジネスでは、それでは合理的でない場合があります。負け試合を、9回まで戦うよりはサッサと棄権して、次のゲーム、あるいは、次の別の競技に移行したほうが、企業にとってはよい場合が多々あるようです。

しかし、これは"意外"と、いや"かなり"難しい。

 ビジネスの契約書では、一般的には、契約の終了に関する条項が設けられています。
例)

(契約有効期間と契約解除)
・契約期間は、201X年1月1日から201※年12月31日
・甲乙両者の協議により別途契約期間を変更できる
・"契約終了"の意思表示がなければ自動的に同等の内容でカ月毎に更新
・甲および乙は、相手方が次の各号の一に該当する場合には、何らの催告を要せず本契約を解除し、かつ損害賠償請求をすることができる。
(本契約の条項の一に違反するとき、差押、仮差押、仮処分、租税滞納処分を受け、または整理、会社更生手続の開始もしくは競売を申し立てられ、または自ら整理、民事再生、会社更生手続を開始もしくは破産の申立をしたとき。自ら振り出しもしくは引き受けた手形または小切手につき不渡り処分を受ける等支払停止状態に至ったとき。営業の廃止または解散の決議をしたとき。)

契約期間が決まっていますが、特に異論がなければ、自動的に更新され、契約違反をした場合あるいは、どちらかが倒産したり、営業停止になったりしない限りは、続くようになっています。

つまり、契約違反がなければ、途中でやめるような方向にはなっていないのです。もし、双方でビジネスがうまくいかなくなりそうな場合には、

(協  議)
本契約及び個別契約に定めのない事項又は疑義が生じた場合は、甲及び乙は、信義誠実の原則に従い甲乙協議し、円満に解決を図るものとする。

(契約の目的)
甲乙双方の共同作業及び分担作業が必要とされることを認識し、互いに役割分担に従い分担作業を誠実に実施するとともに、相手方の分担作業の実施に対して誠意をもって協力する。

 

大雑把に平たくまとめると、

「期間は一応決めるよ」
「何も問題がなければ自動延長するよ」 
「見直す時は話し合いね」 
「契約内容を守らないとやめることもできるよ」
「問題が起きたら、なるべく双方で力を合わせてなんとかしてね」

ということです。

  *   *   *


訴訟中の
「なぜ、"その"時点で、ビジネスをやめようとしなかったのか?」という疑問。。。


だって、契約書には「なるべくガンバレ」と書いてあります。

同時に、自分が検討し、主体となって進めてきたビジネスですから、様々な山や谷を乗り越えてなんとか成就、成功させたいと思うのは当然だと思いますし、多少おかしくなっても、なんとか立て直したいと考え、立て直せると自分を鼓舞して、"自分から"途中で投げ出すようなことはしたくありません。

さらに、相手に明確な契約違反がない場合、「見直す時は話し合いね」条項で相談することになりますが、中途解約ですから、「そっちの都合なんだから」賠償が問題となります。それを払ってでも契約を中断するかどうかと考えると「なんとか立て直すほうがいいんじゃないか?」という判断になりがち。特に、実施当事者の場合は、殆どそうなるのではないでしょうか。

つまり、ビジネスの現場での「やめる」決断は、いくら「オマエに任せたから」と下命しても、実際には、実施当事者ではなく、経営層でなければ下せない構造なのです。

 

 

そして、多くの人々を巻き込んでいるコトを「やめる」と、色々な問題が派生します。やり始めた責任、費やした時間や費用の責任、関わっていた人々や産業への影響、そのためにできなかったこと(機会損失)への批判対応等々。。。

やめる決断が一番難しいのはなぜか。
実は、「やめる」ために、いつ、どのようにやめていくか、やめたあと次に何をどうするか、それが一番重要だからなのです。ビジネスだけでなく政治でもね。