【半蔵門ビジネストーク】20170628 ODR FORUM 2017 もはや実験ではなく
2017年6月12日、13日に、ODR FORUMには、世界25カ国、160名の出席者を迎え、 フランス・パリにて開催されました。
これまでは、主に、活動内容を発表することに重点を置いて来ましたが、今回、当社は1スポンサーとして社名を各所に表示しています。
フォーラムでは、前回に続いて、ODRのある特定分野だけでなく広く「司法と正義へのアクセス」がテーマとして扱われました。
大きくこれまでと毛色が違ったのは、具体的なテクノロジーの適用例や実現可能なアイデアが多く発表されたことです。それも、電子商取引など兼ねてから適用されてきた分野以外の、B2Bの仲裁への適用を謳ったADR事務所が出て来たことです。
それらは決してセンセーショナルな刺激的なシステムではありませんが、案件の申請から、当事者、調停者間のコミュニケーション、証拠や資料の提示、共有、保存、過去判例や判断の参照、共有、判断の通知や執行(結果の実施)状態の管理など全体のプロセスを管理する地道やシステムとして、複数の機関や民間が実際の画面を表示しながら、紹介しています。
前回のフォーラムをハーグで主催したオランダのHill technologiesでも、シンプルながら着実な実施の手順を備えたサービスをデモで紹介しました。
中国深センのADR事務所からは、実用的なAPIを備えたプラットフォームが発表されました。これによると、外部のODRアプリケーションとの連携が可能となり、例えば、提携した組織から紛争案件をAPI経由で共有することができるようになるということです。
また、eBayやPaypalでのODRの実用的システムの草分けであるベンチャーODRの雄・MODRIAは、すでに具体的なシステムやサービスを展開していますが、直前に、Tyler Technologies社に買収され、傘下に入りました。同社は法廷向けのシステムに実績があります。これは黎明期から先頭を走って来た同社がしっかりした資本の傘下に入るという意味です。即ち、ビジネスとして本格的に成り立ってくるであろうということです。ブランドとしてのMODRIAは残るそうです。
もはや「実験の時期」は完全に終わった感があります。
一方、AIなどの最先端の技術への取り組みはまだまだの感があります。弁護士が失業する?などという話題も出てくるくらいで、
「”Artificial IntelligenceI”ではなく、まずは”Arbitrators Intelligence”が重要だ」
という発言もありました。
ところで今回は、アジアからの出席者が多かったことは嬉しい変化でした。
中国は最近ビッグチームを送り込んで来ていますし、その他にもタイ、ハワイからの日系弁護士、日本から米国留学中の弁護士など、一定の比率を占めて来ています。2008年から出席してきましたが、稀にしか日本から関係者を招けていなかったので、昨年よりはいい兆しに思えます。