周辺業務考【半蔵門ビジネス雑談】20200304
最初に就職した会社はソフトウェア開発会社だった。最初の業務は、システムの一部の処理をするプログラミング。画面への表示もなく、入ってきたデータを加工してファイルに出力するプログラム。最終的に、世の中の仕組みのどの部分に役にたっているのかは全くわからなかった。そして、徐々に担当範囲が広がっていく。
入ってきたデータ
加工して
ファイルに出力する
だけだったのが、入力と出力のキーボード処理とモニタ出力処理が増えた。
(データを入力する画面)
入ってきたデータ
加工して
ファイルに出力する
(出力したデータを画面に表示する)
誰が、どんな機器から、どんな操作をして、なにが入ってきて、
どんな機器に、どのような形式で表示され、誰が見るか
最初に担当した処理は、ごくごく単純で、ただただ一生懸命処理すればよかったが、周辺業務を考えはじめると、その比率は圧倒的に周辺業務のほうが多くなった。どんなインプットをどういうことに役立てるために、出力するのか。そのためのデータ処理なのだ。
データを処理することが主要な担当箇所なのに、その周辺業務のほうに考えるべき主要素がある。これは、その後の仕事のやり方を考える上で、永遠のテーマに近くずーっと意識して携わってきている。
「仕様を決めてくれ」
よく聞くセリフだ。
確かに、仕事として請負うので、仕様がないと何を依頼されているのかも明確に定義できない。しかし、よく考えると、その仕様と決めてもらうスタイルでは永遠に下請け業務から抜け出せない。
最近話題になった「名もなき家事」みたいなものだろうか。仕事でも、名もなき仕事が仕事本体を形作っている。
最近、プロモーションビデオの日本語字幕の仕事を受けた。業務を分解すると、
(元動画入手)
- 英語ナレーションヒアリング
- 翻訳、ナレーションとテキストの比較
- 字幕向けの文字数調整
- 動画への割り振り
- 動画への字幕付け
- 字幕付き動画出力
(再生時の環境に合わせたデータ形式)
依頼の主内容は、5.動画への字幕付け である。
周辺業務ですぐに想像できるのは、2.翻訳、6.動画出力 だろうか。字幕用の文字データが支給されていれば、動画字幕編集ソフトで、画面に配置すれば完了のはずだが。。。
実際には、周辺業務に重要なことがある。
- 実際のナレーションと支給されたテキストは一致しているだろうか?録画した現場で英語ナレーションが変更されるのはよくある話だ。市場規模や売り上げ数値あたりが変更されたかもしれない。あるいは、「てにをは」が変わっているかもしれない。
- 翻訳した結果から、字幕の標準的な文字数にするために、1秒間に4文字が理想的だが、何をカットするか何を文字に載せるかを検討する。英語より日本語のほうが長くなる傾向にあるので、調整をしっかりしたい。
- 映像内にすでにテロップがある場合、字幕とそれが重なってしまうことがある。テロップへの重なりを避けて字幕の位置を変えることは可能だが、そうすると、読んでいる人からみると字幕の位置がちょくちょく移動することになる。違和感とともに見にくいことになる。
- 字幕を縦にすることも可能だが、今度は文字数がさらに制限される。再度、字幕内容をどうするかの調整が必要だ。
- 動画の出力時は、どのようなデータ形式で出力するか、メディアはどうするか、が問題となる。再生する環境について確認しなくてはならない。最近だと、4Kのデータを扱うことがあるが、再生環境が4K対応になってない場合もある。再生する機器によっては扱えないデータ形式やメディア形式もあるだろう。こうした点も周辺業務の一部として確認する必要がある。
斯様に、周辺業務の比重は高い。だからといって、ここを避けて自分らの仕事範囲を頑なに守ろうとすると、頼むのが面倒臭くなって依頼されなくなってしまうかもしれない。
いかに周辺業務の取り扱いを理解して、スムースにこなすか。本業以外のこれらの部分をどう扱い、こなしていくかが、意外な落とし穴にもなり、差別化の要素にもなっていくと思われる。