変化するサプライチェーン【半蔵門ビジネス雑談】20181026
米国と中国の関税戦争の影響は、複雑に構築されてきたサプライチェーンに影響を及ぼしている。
越境サプライチェーン
ある製品が市場に出るまでの生産工程で、日本企業が、原材料を中国に輸出し、中国で安く加工して、別の国へ輸出し最終工程を経て、日本や米国などの市場に投入されることで、輸送費なども考慮して最適な価格で品質を維持してきたのだが、米国から中国への輸出関税により、このサプライチェーンが影響を受けている。
日本企業は、製造拠点を中国から日本に移したり、消費国での現地生産に切り替えたり、適用除外の申請をしたり等、対応を急いでいるが、そうした対応と関税を比較して、場合によっては関税を支払うケースも出てきそうだ。
自動車では、米国・メキシコ間のNAFTA条約の見直しで日本メーカーもなんらかの対策が必要とされることになりそうだ。
日本メーカーは米国への輸出に関税がかからない同条約下でカナダ経由、メキシコ経由で日本の現地法人が自動車を販売しているが、今回の見直し合意で、部品調達の原産地比率を引き上げ、さらに賃金がメキシコの賃金の倍近い水準での制約ができたため、実質アメリカで部品調達をすることを条件づけている。記事時点(8月30日)でメキシコは合意したが、カナダが合意しないと関税が課せられる恐れがあり、サプライチェーンの見直しが必要となる。
この関税戦争は、永久に続くとは限らないため、関税回避のための投資を新たにする対応には躊躇する場合もあり、見極めをどうするかが当面の課題だ。
D2C
アパレルのネット販売は、1兆6500億と前年比41%と増加中で、アパレル市場自体は苦戦しているが、ネット比率11%とこちらも増加中だ。
特に注目されているのが、D2Cダイレクトトゥコンシューマーという方式で、デザイン力のある小ブランドが小売店を持たず、多額の広告費をかけず、縫製などの職人マッチングサービスを活用して、ネット販売で直接消費者に商品を届ける方式だ。
これまでならブランドを立ち上げるには、生産ラインを確保し、多額の広告費で消費者にリーチして、直営店舗で販売をするのが王道だったが、D2Cでは、ヌッテやシタテルなどのマッチングサービルを利用し、SNSやインスタグラムでダイレクトに宣伝し、無料のE Cサイトで販売まで行えるのだ。
倉庫で小売でネットで
従来の消費者への小売の仕組みでは、生産地から倉庫に運ばれ流通を経由して小売店に並べられた商品を消費者が店舗で購入することが基本だったが、アマゾンは、倉庫をベースに小売店をスキップしてネットで販売する方法で成長した。
アリババは、生鮮食品を販売する店舗を開始したが、そこはネット販売の倉庫の役割も果たしている。「店内で従業員がネット経由で注文された品をピックアップしている。」消費者は倉庫に買いに行き、倉庫からネットで注文するのだ。小売店舗は登場しない。
小売店舗ー>ネット通販への置き換えだけでなく、サプライチェーンも含めた再構築が始まっている。
紛争解決については、あくまでサプライチェーンの変化すなわち製造流通内での変化なので、消費者への責任窓口は、ネットショップになるが、たらい回しにならないように、自主規制、ルール化も必要となるかもしれない。