アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場【読書/映画感想】20190922
アランリックマン氏の遺作となった軍事サスペンス。2015年の作品。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アイ・イン・ザ・スカイ_世界一安全な戦場
現代の情報による戦争。ナイロビの上空には、ヘルファイアミサイルを搭載したリーパーが遠隔コントロールにより飛行している。高解像度カメラは地上の様子をはっきりととらえ、現地には潜入した工作員が、昆虫型ドローンを操作して敵アジトの様子を英国と米国の作戦本部に送る。それらからテロリストを監視し、時にリーパーから直接攻撃をしかけるが、いざ攻撃となった場合、精度のよすぎるカメラは小さい女の子が標的近くでパンを売るのを発見。攻撃の再計画や女の子のパンを買い取り逃がそうとするが、結局、女の子は爆風で傷を負い、病院で命を落としてしまう。
テロリストを排除しなければ自爆テロによって80人の命が危険にさらされるが、目前のパンを売る女の子の命はどうするのか?いわゆるトロッコ問題。の暴走するトロッコの線路の先の5人の老人、右の線路に進むと1人の子供、あるいは1人の若者と五人の科学者。。。など、答えのない選択肢が描かれる。
ミサイル発射の役目を負ったスティーブ中尉(アーロンポール)は、発射の命令を受けたが目標物付近に子供を発見する。そして、発射をしないで周辺被害の再確認を求める。世界一安全な戦場からであればこそ、この抑止ができなければいけない。そうでなければゲームに成り下がる。
小鳥のドローン、カナブンのドローンは、今の自分たちの周囲にも飛んでいる虫は本当はドローンではないだろうかとさえ思える。
最大の問題は、責任転嫁の連鎖だ。軍は明快。敵を殲滅するチャンスに攻撃のみ。しかし、それを合法化するにあたって、長官、法律顧問などが判断を委ねられる。しかし、テロリスト殲滅か、危険度45%の子供か、という判断を委ねられると、長官は法務大臣に委ね、法務大臣は首相に委ね、決定できないなかで、軍部が被弾地点を少しずらして割り出したより低い被害推測の数字で、決定を下す。
世界一安全な戦場から見た空からの映像で、爆発音も生活の音も聞こえないはるか遠くの国の会議室から下された決定が、テロリストと共に生活者の命をも消してしまう武力攻撃は第二次世界大戦から70年たっても変わっていないことを再認識する。
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そうそう。
ヘレンミレンのセクシーな冷酷さはいつも通り。