「オンライン診療」が単なる移動時間削減にならないように【半蔵門ビジネス雑談】20200507
いろいろな生活制限、病院の混乱、かかりつけの医者も混雑する昨今の状況のなか、持病があるものとしては、今こそオンライン診療を実現推進するタイミングではないかと期待している。報道でも、そのような期待や提言が出て、いずれも、技術面、制度面、規制面について述べられているが、単にそれだけだと、移動時間が削減されるだけになりはしないかと危惧している。どういうことかというと。。。
医師の診療時間は変わるか
TV会議で診断するオンライン診療の例がでている。たとえば、文字通り、患者は自宅で、先生とTV会議で繋いで、測定結果をみたり、顔色をみたり、インタビューしたり、気になることを相談したりする。先生は病院や医院の診察室で椅子に座って受け答え。これだと、患者が移動していないだけだ。つまり、実際の病院の診察室の外には、通院してきた他の外来患者が待っている。例え、全員がオンライン診療だとしても、先生の時間は変わらない。先生のブラック勤務が加速されるだけだ。
オンライン患者の待ち時間は変わるか
今は大抵の病院は初診を除けば予約制だ。それでも、前の患者が長々と話をしている場合、結局予約時間を大幅に遅れることもざらにある。オンライン診療になれば、待合室で待たないものの、予約時間になったらPCの前に座っていなければならないことになる。家にいるとしたら、予約時間を過ぎて待たされた間に宅配便がくるかもしれない、トイレにも行きたくなるかもしれない。その間待っている時間はもしかすると病院にいるよりストレスフルかもしれない
医師の働き方への効果は
医師の診療時間に変化なく、患者が診察室にくるかTV会議経由かだけの違いだとすると、医師の時間はなにもかわらない。そこで、考えそうなことは、医師の休憩時間にまで割り込む診療だ。休憩中あるいはオンライン診療専用の時間を設けてその時間にオンライン診療ができるんじゃないかと管理者側が考えることは十分想像できる。その場合、休憩が休憩でなくなるし、例えば自宅からできるだろうと考えると、病院以外の施設からの診療ということはいいのか、その合法性や責任制はどうなのかということになってくる。
薬を処方するだけの診療はできるかも
そう考えてくると、単にTV会議ができるだけでは単なる移動時間が削減されるだけになりかねない。一つだけ行けそうなのは、例えば、慢性の持病があり、普段の診療でも様子を見てもらって(つまり異常なしの確認)、薬を処方してもらうことが主目的の診療の場合には、非常に短い時間で、例えば、診療中でも、「ちょっと待っててね」と別室のTV会議診療でヒアリングし、薬を処方する診療をするというのはできるのではないか。
ちなみに、今でも、例えば皮膚科と整形を一緒にしているお医者さんで、別室にそれぞれの科の患者さんを通しておいて、いったりきたりする診療スタイルのお医者さんも見たことがある。
AIオンライン医師への期待
つまり人が介在する診療にオンラインだけを入れてもあまり医療現場の解決にはならないと思える。もう少し進めて、AI医師がオンラインで自動応答するところぐらいまで行かないと「オンライン診療」が単なる移動時間削減になったね、というレベルで終わってしまうことが想像できる。
単純ではない
医師という特別なスキルと信頼性が必要な職種へのオンライン診療導入は、単純ではないことがわかる。対面でやっている限り、同じ時間には一人の医師が一人の患者への対応とならざるをえない。
あとは、タイムシェア方式だ。同じ30分内に3名の患者の予約を入れて、それぞれのTV会議により、5分ごとに面談し、30分で一人10分の診療を同時にこなすとか?時間に縛られるあまり、患者への対応が手薄になる可能性は排除できないかもしれないな。
「オンライン診療」が単なる技術導入だけの、患者の移動時間削減にならないように、工夫のしどころだ。