半蔵門御散歩雑談/ODR Pickups

株式会社ODR Room Network

このブログは、株式会社ODR Room Networkのお客様へのWeekly reportに掲載されている内容をアーカイブしたものです。但し、一部の記事を除きます。ODRについての状況、国際会議の参加報告、ビジネスよもやま話、台湾たまにロードレーサーの話題など、半蔵門やたまプラーザ付近を歩きながら雑談するように。

紛争でしたら八田まで(10)

紛争でしたら八田まで(10)【読書/映画感想】20220907

 

ロシアウクライナ戦争にしても、中国拡大路線にしても、地政学的理解、解釈、分析がますます必要な時代になっている。今まさに最適なシリーズ。

 

本巻のストーリーは、

  • 他民族を受け入れてきたフランスが抱えるジレンマ。セレブとイスラムとテロ。移民でもフランス国民になれる制度であるがゆえ、声に出せない不満が鬱積した。自由と平等を追求すると突き当たるジレンマ。
  • イランは周囲を敵に囲まれて、各種法律の上位にイスラム法がある。自由や平等もイスラム法に反しない範囲でとなる。ペルシャの遺跡が出てもどう扱われるかはわからない。宗教と政治と法治。
  • そしてカナダ。同じく移民を受け入れてきたことによる多民族国家。自由、しかし、無法地帯ではこまる、秩序と自由のせめぎ合い。学校でのクラス分類をめぐって対立し始めた仲のよかったグループも対立する。反対派、賛成派、まとまるのは熊の襲来に対して力を合わせる時。やはり外部に敵をつくるのはまとめる、まとまる理由になるのだ。

実世界では、アメリカの米国第一主義、英国のBREXIT、ロシアのウクライナ侵攻、中国の軍事拡大、借金による途上国絡め取り政策、世界は自国第一主義に向かっているように見えている。

民族の壁を取り払い多民族を受け入れても、そう簡単に同化はできず、秩序にはルールが必要で、どのルールにするかを巡って、民族の対立に向かう。秩序が過ぎれば独裁に近づき、自由が過ぎれば、主導権の奪い合いに帰結する。国境は国の境だけでなく、DNAの境、宗教の境、政治構造の境、どうにでも出てきてしまう。それをまとめるには外部の敵、仮想敵国、別の争い要因が有効な策なのか。

争いを避けるために同盟を結ぶが、そのルールを無視した外部者には通用しなくなる。核を持つ国は、核を持つ国に争いを仕掛けられない働きは機能するが、核を持つ国が持たない国に侵攻したウクライナの場合、核を持つ米国も直接対抗できないことがわかった今、核をやめるか、核をもつか、あるいは核を共有する(使える、つまり、持っているのと同じ効果)という形で実質的に使用できるようになるかしか選択肢がなくなる。

 

核廃絶は夢の夢。核保持は平和維持の一つの形と受け入れて、他のことに力を注ごうか。