ODRシステムデザイン【たまプラビジネス余談放談】20231128
ODRシステムの進展で、方法論としてシステムデザインの議論が活発になっている。単なるプロセスのIT化ではなく、全体の運用を通して、Access to Justice 正義へのアクセスの目的を達せられるよう利用者視点、関係者視点を踏まえて、IT以外の部分とのバランスも考えていく必要がある。ODRに関するシンポジウム聴講中にあれこれ考えた。
EUとeBay
先行して法制化され導入、運用を開始されたEUのODRプラットフォームだが、近々一旦クローズするらしい。理由は、応諾率。ADRまで到達したのは2%、250万件のうち100件程度だそうで、同システムでは”30日以内に相手から返答がない場合自動的に終了”となってしまう、結果として応諾率が低いということだそうだ。また利用者からの再利用希望は極めて低いそうだ。ちなみに、ODRの成功事例として知られている米国eBayでも、紛争類型省略して、期間を決めたクローズを行うので同じようだが、応諾率も満足度も高いことが報告されている。どうしてEUで満足度が高くならなかったのか?eBayでは、支払いをエスクロー方式にしていて応じないと支払いや返金が受けられないことや、あるいは紛争結果が評価に反映されるシステムを採用していること、つまりシステムデザインの結果なのか。そうまさに、システムデザインの結果だろう。
分野別ODR
実際の導入海外の例で見ると、具体的な分野に絞ったODRがよくある。離婚調停、お金のトラブル、交通事故など。これは汎用的な紛争解決プロセスをシステム化することは難しいことを示す。 また、分野を絞ることで相談の質問を絞り相談しやすくすることが、相談者に”寄り添う”という意味で、一種のシステムデザインといえる。専門性を打ち出すのはよいアイデアだ。
アジャイル的アプローチ
コロナ禍もあり、部分的にIT利用は進んだ。特に、「期日」はズームなどで既に実現しているように感じる。しかし、まだ、申し立てがオンラインでできるADR機関は多くなく、紛争案件の進行管理や、結果の遂行状況の管理などまでカバーされているシステムは非常に少ないと見ている。
少なくとも「申し立て、申し込み」はオンラインでできるようにするべきで、何年か前にオンライン化を紹介した際には、「件数が多いので処理できなくなる」等の懸念の声もあったようだが、始めないと分からない面もある。国民生活センターの「越境消費者センター」の例でも、開設する前の越境紛争は0件であったが開設初年で数千件の件数が認められた実績例もある。
これこそ、アジャイル的アプローチとして実施に踏み切る最適なフェーズだ。そして全体システムデザインに反映させていく。国や業界の足並みも揃いつつあり、いいチャンスである。