【ODRピックアップ/半蔵門ビジネストーク】20161125 行き付けのクリーニング店が閉店して思う
1.安い近所のクリーニング店
ここ8年程、ずーっと利用していた(私にとって)ご近所のクリーニング店が閉店しました。毎週決まった日の朝、早朝割引を利用するために、ワイシャツやスーツ、衣替えにはオーバーや、時には娘の礼服や浴衣などを預けてきました。通勤途中に寄れるクリーニング店は限られていますが、毎週のことなので、やはりワイシャツの価格の安い店を選んでいました。この店では、店頭に大きな看板で「Yシャツ120円」と表示していました。
Tクリーニング店は、午前中にワイシャツを出すと、120円/着。大抵は3着以上出すので、360円/回程度です。その価格でも、クリーニングされたシャツは、当然ながら、1枚ずつたたまれ、ハンガーにかけられ、透明なカバーナイロンに入れられてきます。
また、衣替えのシーズンになると、集客サービスとして、40%オフを店頭で宣伝します。毎年のことなので、その案内が出るまでは、スーツやコートなどの大物は持って行くのを控え、割引の恩恵を待ちます。結果として、1000円のスーツは600円、1500円のコートは、750円。お客としては有り難いのですが、その手間、機械費用を考えると、いったい1着あたりどれほどの利益が出るのか。
2.安くなく(私にとって)少し不便な場所のクリーニング店
同店が閉店のあと、探して見つけたのは、F店。チェーン店のようです。こちらは、ワイシャツの早朝割引はなく、新規顧客に配布される39円チケットが50枚。更に、午前中割引は10%、新規割引4回分チケット、バッグ持参、ハンガー返却などでポイント還元がありますが、閉店してしまった店に比べると、価格差は歴然。割引後の価格で、
ワイシャツ 120円 220円
スーツ 600円 1300円
機械の原価や運用コストはそれほど差がでないでしょうから、その差は人件費に廻る部分が増えていきます。従業員の処遇には大きな差が出ている筈です。
3.「安い」戦略はジリ貧になっていく
価格が安いことで集客はできるかもしれません。でも、気をつけなければならないのは、安い価格の商品に顧客が集中しがちだということ、本来安い価格を呼び水により利益のある他の商品を売ろうとしていたのに、結果的に安いものだけが買われることになりがちだということ、その結果、忙しいけれど、儲からないという悪循環になりがちであるということ。
安いものばかり売れると、仮に利益率がよくても、利益額は少ないままで、結局財務を圧迫するか、人件費額に直接跳ね返ってくるかになってしまいます。結果、お店を維持できないということ。
VWの戦略は、低価格車を作らないということになることはよく知られた話です。価格を目玉戦略にしてしまうと、結果的に、安いものに集中してしまうので、前述のようなジリ貧的経営になってしまうからだといいます。
クリーニング店の閉店は、価格を下げることの限界を見せてくれます。価格を下げない店が生き残る。。。デフレから脱却する兆しなのでしょうか。