失注の理由、発注の理由【半蔵門ビジネス雑談】20200218
中堅IT企業の開発部門にいたころ、営業に同行することが多かった。
商談を決めるタイミングの場合もあったし、新人の新規営業をバックアップするための同行もあった。
新人営業のバックアップでは、エンジニアから転向したトークに要領を得ないセールスに、援護射撃で商談の進行を手伝う。なかなか、商品の説明に持ち込めない場合には、世間話から製品話へそしてシステムの話へ誘導する。
商談を決めるタイミングの場合には、主に、値段の提示であと一声の値引きで発注がもらえる場合の値引きの決済を持ち帰らずにその場で行えるように決済権を持つものがいく場合がある。多くは持ち帰りにするのだが、持ち帰ると決まらない場合などはそうした賭けに出る場合もあるのだ。
当然ながら商談は受注できることもあるが、失注することもある。
失注の理由は、後に担当営業の報告から知る。
- 価格で負けた、
- 他の商談とのバーターでやられた、
- すでに決まっていて相見積もりだった、、、
などが多いが、
- 要求を満たせなかった
というのは報告としては意外と少ない。実際に要求を満たしていたのかもしれないが、実は、相手(顧客)はそう言いにくいのではないかと思っている。
後に発注する側になって気がついたのだが、
「要求を満たしてない」
を落選理由として伝えると必ず
「なんとか(再提案)するからチャンスをくれ」
という粘りをされるからだ。実際の失注理由は、発注”しなかった”理由を考えないと正しく理解できていないのではないだろうか。
そして発注側にたってみると、断る理由は実はどうでもよくなる。それよりも、発注する理由が重要なのだ。なぜそこを選ばなかったのかではなく、なぜこっちを選んだのか。それこそが社内決済に重要だからだ。そこには価格、商談バーター、要求達成など営業マンが入手したのと同様の理由もあるだろう。しかしそれだけではない。
値段が高くても、細かなところに気がついて指摘をしてくれたり、言われたことだけでなく、疑問点の質問を通じていろいろと気づかせてくれる相手を選びたくなる。値段が高いのは、自分たちのサービスや製品、提案がこれこれこういう点に重点を置いて配慮しているからだと、値段が安いことではなく高いことへのアピールをしてくれる、つまりは選ぶ理由を合わせて提示してくれる事業者を選びたくなる。
発注する理由。
それは一緒にやったら(仕事をしたら)いいものが作れそうだ、いい仕事ができそうだという信頼関係が築けそうかどうかという将来への期待感も大きいのだ。青臭い理由ではある。この点が発注者の公式記録に残っていない場合もあろう。
でも、本音は案外とそんなものだ。